44歳の僕がステージ4の大腸がんと診断されて

2016年大腸がん発覚。手術後、腹膜への転移が確認されステージⅣだと告知される。その後半年間に及ぶベクティビックス抗がん剤治療を受ける。2018年12月がん再発。アバスチン抗がん剤治療を受ける。48歳になりました。

がん先進医療の陽子線治療センターの出張説明会に行ってみた

がん先進医療の鹿児島にあるメディポリス国際陽子線治療センターの出張説明会に行ってみた

この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2019年の8月の上旬に書いたメモをまとめています。一度は候補から外した陽子線治療でしたが、市内で出張説明会を行うということを知り、ダメもとで行ってみました。

市内で陽子線治療の説明会があるということで行ってみることに

2019年8月。

暦も変わり、今日から8月になった。

カレンダーをめくると「ああ、また一ヵ月生き延びることができた」と思う。

今日の体調の方は良好で、数日前まで感じていた倦怠感やのどの違和感はどこかへ行ってしまったようだ。

数日前に治療方法についていろいろと相談に乗ってくれている病診連携室のマエザワさんから僕の携帯に連絡があった。

内容としては以前提案してくれた鹿児島県の指宿にある陽子線治療の施設であるメディポリス国際陽子線治療センターの福岡オフィスから出張での陽子線治療に関する説明会を市内で行うので行ってみてはどうか?ということだった。

medipolis-ptrc.org

陽子線治療については以前マエザワさんからメディポリス国際陽子線治療センターに問い合わせてもらったが、あまりいい返事はかえってこなかった覚えがある。

「とりあえず何か手掛かりになるかもしれないし、何がきっかけになるか分かりませんから行ってみたらどうですか?」

とのマエザワさんの言葉に「それもそうだ、とにかく行動しなくては」と思い、行ってみることにした。

マエザワさんからメディポリス国際陽子線治療センターの福岡オフィスの連絡先を聞いて問い合わせてみると、説明会に参加するにあたって特に予約などは必要ないとのことだった。

説明会は市内の多目的ホールのなかの視聴覚室で行われた。参加人数は僕を含めて10人もいなかった。

開始時間になり、担当のかたが陽子線治療についての説明を始めた。

陽子線治療とは

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陽子線治療とは大まかに分類すると放射線療法の一種で、一般的な放射線治療ではX線を使った「光子線」になるが、陽子線や重粒子線は「粒子線」に分類される。

違いとしてはX線などの光子線は重さを持たない光線に対して粒子線はとても軽くはあるが一応は重さがある粒子(陽子はこの地球上でもっとも軽い物質)であるということと、粒子線はがん病巣にたいしてピンポイントで狙いをつけ照射できるということ。

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一般的な放射線治療で使われるX線が身体に照射される場合は身体に当たった部分から威力は弱まって病巣を抜けていくが、陽子線や重粒子線の場合は弱く入って病巣で止まって消える。セミナー講師が言うには「すーっと入って病巣部分でぱっと強くなる、打ち上げ花火のようなイメージですね」とのことだった。

そして陽子線と重粒子線の違いとしては粒子の大きさに違いがあり、陽子をテニスボールに例えると重粒子はバスケットボールくらいの大きさになるという。それだけ重粒子の方が重くなるし重い分パワーがあるということになる。話を聞いたイメージではとても小さな粒子という物質をがん病巣にぶつけてがん細胞を死滅させるという感じだった。

そして抗がん剤治療のように副作用で苦しむことが少ないということと、治療中の痛みなど苦痛がほどんどないというのも特徴的だった。

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陽子線治療に適応しているがんはとは

陽子線治療を受けている癌患者さんはどのような方が多いかというと、話を聞く限りでは2018年4月から公的医療保険が適用になった前立腺がんの患者さんが多いということだった。

ただ「がん」と一言で言ってもさまざまな臓器、進行度、再発の有無、現在治療中なのか、多発性かどうかなどさまざまなケースがあるので一概にはいえないし、全国にある陽子線、重粒子線の施設ごとで考え方や方針も違うため「ここではできなかったけど違う施設では治療できた」なんてこともあるらしい。

治療がむずかしいと言われたのは胃癌や大腸がんなど「動く臓器」にあるがんだということ。陽子線照射の際は10分から15分くらい動かない状態を保たないといけないが、胃や腸は消化吸収のために活発に動くためにこの治療には向いていないとのことだった。

自分の病状で陽子線治療ができるかどうか確認する一番手っ取り早い方法は全国にある最寄りの陽子線治療、重粒子線治療を実施している各施設へ問い合わせてみて直接聞いてみること。多くの施設で相談窓口を設けているので、そこで相談してみて治療の可能性があるならばセカンドオピニオンに進むという流れが一般的らしい。

相談を受けても4割くらいが治療の可能性がないために事前におことわりすることが多いので、セカンドオピニオンを受ける段階になって初めてかかりつけ医にも相談すればいいとのこと。

そしてセカンドオピニオンを受ける準備として担当医から紹介状をかいてもらったり診療情報提供書などを送ってもらわないといけないとのことだった。

陽子線治療にかかる費用

陽子線治療でかかる費用は保険でまかなえる部分もあるが、技術料は自己負担になるため総額で330万円くらいの費用になるらしい。

Q.治療費はいくらですか?

陽子線治療は、先進医療として行います。保険診療の治療費も含めると、総額で約330万円の費用がかかりますが、民間のがん保険(先進医療特約など)に加入されていると、保険金でカバーできます。20184月から前立腺がん、外科切除できない骨や筋肉などにできる骨軟部腫瘍、頭頚部がんの一部に、それぞれ健康保険が適用することになりました。 治療費の負担が軽減されることで、より身近な治療の選択肢となります。

※パンフレットより一部引用

さらに治療費の他に鹿児島の指宿に長期滞在するということになると滞在費も別でかかるので330万円以上は軽く見積もっておかないといけない。

「う~ん、330万円かあ…新車が買えちゃうなあ…」

単純にそう思ってしまった。 

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セミナー終了後に個別相談を受けてみる

セミナー終了後に講師の方が個別に相談も受け付けるというので、一応ダメもとで個別相談をお願いして、おおまかに僕の病状と経緯を説明して治療の可能性があるかどうか聞いてみた。

僕の病状としては大腸癌の再発で腹膜播種があって再発箇所が2か所あるという現状なので難しいかもしれないけれど、一応ドクターの方に相談してみるのでまた後日その結果を電話で教えていただけることになった。

個別相談も終わり陽子線治療の説明会はこれで終了となった。

陽子線治療のセミナーを受けてみての感想

陽子線治療はこれまで受けてきた標準治療と違ってかなり特殊な治療方法だという印象だった。

ポジティブな面としては

  • 副作用が少ない
  • 身体にメスを入れる必要がない
  • 治療中に痛みを伴わない

といった面があるが、逆にネガティブな面としては

  • 治療費が高い(330万円以上)
  • 鹿児島の指宿に長期滞在(1ヵ月くらい?)しないといけない

ということがある。

現時点での率直な僕の感想を言うと「治療が可能なら受けてみたい」というのが正直なところ。

僕は現状では抗がん剤治療も2種類をやり終えて、がんは増大傾向にあるので、標準治療では僕の中にあるがんの縮小の望みは薄いと思っている。

陽子線治療でがんが縮小できるならそれはなによりも優先すべきだと思うし、ネックである金銭面は全く手が出ないという金額でもない。

お金に関する考え方は人それぞれだと思うが、僕はつねづね「時間>お金」だと思っていた。

時給いくらの労働などで自分の時間をお金に変えることはできるけど、お金を払って自分の時間を増やすことはむずかしいことだと思う。どんな億万長者だって1日を25時間にすることはできない。

でも、この陽子線治療で僕の寿命が少しでも延びるならそれはお金を払って自分の時間を買ったことになるのではないかと思う。

命さえあればお金を稼ぐ手段はたくさんある。でも今の僕には命を、自分の時間を稼ぐ手段は限られている。

そう考えると330万円という値段はけっして高くは無いのかもしれないと思うようになってきた。

 

まあ、それ以前に治療が可能かどうかメディポリス国際陽子線治療センターのドクターの判断を待たなくてはいけないので、現時点であれやこれやと悩む必要はないのかもしれない。

期待するだけして「やっぱり駄目でした」なんてことはよくあることなので、あまり期待しないで続報を待とうと思う。