44歳の僕がステージ4の大腸がんと診断されて

2016年大腸がん発覚。手術後、腹膜への転移が確認されステージⅣだと告知される。その後半年間に及ぶベクティビックス抗がん剤治療を受ける。2018年12月がん再発。アバスチン抗がん剤治療を受ける。48歳になりました。

抗がん剤の副作用を気にしつつ、次回投薬までの休薬期間に一人で旅行に行く。1日目、伊勢神宮へ【がん闘病記37】

この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2016年の7月中旬ごろに書いたメモをまとめています。

1クール目の抗がん剤投薬終了から9日目。旅行に出発

2016年7月。

いよいよ今日から旅行に出発する。

この旅行は大腸がん手術での入院中に「死ぬ前に行ってみたいところはどこか?」ということをいろいろ考えた末、とりあえず国内で手近なところで「伊勢神宮」には一度くらい行ってみたいなあということで抗がん剤治療の休薬期間中に行くことにした。

体調を注意深く観察

朝、起きてみて真っ先に気になるのは体調はどうなのか?このまま出発しても大丈夫なのかどうかだ。

もし、あまりにも体調が悪ければ旅行は中止せざるを得ないので注意深く自分の体調を観察する。

完全に抗がん剤の副作用が無くなった感じはしないがまあまあ調子はいい方だと思う。

下痢の方もおさまっている感じがする。

たぶん体調面では大丈夫だと思う。

おそらくはこの先、抗がん剤治療の回数を重ねていけば副作用は重くなる一方だと思うので、もしかしたらこのタイミングが元気に旅行に行ける最後のチャンスなのかもしれない。

チケットを持たずに空港へ行き、搭乗手続きを

余裕を持って起床したつもりだが、なんやかんやしてるとあっという間に出発の時間になる。

先ずは車で北九州空港まで向かう。

これまで北九州空港までは車で何度か行っているが、久しぶりなのとここで失敗すると全てが台無しになると思うと適度な緊張感が走る。

一応、ネットで道順の予習はしておいたので難なく予定していた時間通りに空港に到着した。

駐車場に車を駐車してから空港内に入り、搭乗手続きをするのだけど今回の懸念材料のひとつがこの搭乗手続きだ。

僕は今、飛行機のチケットを持っていない。

あるのは航空会社からメールで送られてきた6ケタの予約番号だけ。

うまくできるか不安だが、「自動搭乗手続き機」の前にたち、手続きを始める。

結果から言うと実に簡単に終わった。

チケット料金も既にクレジット決済で支払い済みなので財布を出すことすらなかった。

無事搭乗手続きを終えて搭乗口に入る。

手荷物検査を受け金属探知のゲートをくぐるときに僕の右の鎖骨の下に埋め込んでいる抗がん剤を投与するための装置であるリザーバーが反応してブザーが鳴ったらどうしよう、と少しだけ心配したけど問題なく通れた。

 

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たいしたトラブルも無く飛行機に搭乗し、無事離陸。

ちょっと心配していたことだが、飛行中に上空で気圧の変化から体調がどうにかなるということもない。

今のところ順調だけど油断は禁物だ。

 

名古屋小牧空港に到着。ローカル路線バスの乗り方でいつも迷う

予定時刻通りに名古屋小牧空港に到着。

僕は名古屋小牧空港に来るのは初めてだ。ちょっとテンションが上がる。

飛行機を降りて空港のロビーに出る。

思ってたよりこじんまりしてる…かな?

北九州空港より小さいかも。

まあ、大きさは別にどうでもいいや。

次はネットでの下調べ通りにバスに乗って名古屋駅を目指す。

空港を出てすぐそばにあるバス乗り場で待っていると10分くらいで名古屋駅行きのバスが来た。

バスの運賃は先払いで700円。

700円が高いか安いかはまあ置いておこう。

ネット調べではバスの方が便利がいいらしいとのことだったからバスを利用することにした。

ローカル路線バスの乗り方は地域によってルールが違うから困る

ところでバスの乗り方ってその地域地域で乗り方というかローカルルールみたいなものがあって、 知らない土地で知らない運営会社のバスに乗るのは少しためらいがある。

僕の住んでる地域では乗車はバスの中央部入り口から。

降車はバス前方の運転席近くの出口から。

運賃の支払いは後払い。

どこから乗ったか分かるように乗車するときに番号付きの整理券のようなものが乗車口で自動的に発券されるので、それを乗車の際に取って降車時に移動距離に応じた運賃を払うシステムだ。

このシステムも初めての人にとっては割と難解な部類に入ると思う。

このように乗り方降り方、先払いか後払いか、もっというと運賃は一律かそうでないか、バリエーションは多種多様だ。

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乗り降りでモタついて恥をかきたくないから知らない土地でのバス利用はちょっとばかり怖い。

今回のバス利用も先払い700円というところまでは分かっていたがお金を入れた後でレシートとか領収書のようなものが出てくると思って待ってたけど何も出てこなくて戸惑った。

とはいうものの無事にバスに乗ることができた。

バスは出発してしばらくすると都市高速に乗った。

高速代を含めれば700円という金額も決して高くはないのかもしれない。

名古屋駅できしめんを食べる

30分もすると名古屋駅に到着。

さすがは名古屋、都会感いっぱいだ。

でかすぎて既に迷いそうだ。

ふと見ると名古屋駅近くの宝くじ売り場では長蛇の行列ができている。

サマージャンボ宝くじを買い求める人々だと思われる。

新宿のチャンスセンターほどではないが、それでもたいそうな人数が夢を求めてひしめき合っている。

そんな行列を横目に駅構内にあるインフォメーションセンターのようなところに行き、伊勢までの行き方を聞く。

一応ネットで予習はしてあったのでスムーズに理解できた。

そして一息ついたところで昼食にしようと思う。

名古屋といえばきしめん。

僕はかねてから本場の名古屋できしめんを食べてみたいと思っていた。

今回は時間がないので駅のホームの立ち食いそば屋で食べることにする。

「海老天きしめん」570円なり。

いただきまーす。

ズルズル………… うーん………日清どんべいのほうが僕は好きかな。

人の好みはそれぞれあるので。

 

伊勢神宮へ

さて、快速に乗って名古屋駅から伊勢市まで約1時間半。

午後2時ちょい過ぎに目的地の伊勢市駅へ到着。

この時間帯に到着して伊勢神宮を全て周りきれるだろうか?初めて来たからどれくらい時間がかかるかつかめないからちょいと心配だがとにかく行ってみよう。

伊勢神宮は内宮(ないくう)と外宮(げくう)という場所に分かれていて、通常外宮からお参りするらしい。

それほどあまのじゃくでもない僕は伊勢市駅の構内にあるコインロッカーに荷物を預けて通常通り外宮から参拝することにした。

 

荘厳な空気感の伊勢神宮外宮へ。

伊勢駅から外宮入口の表参道までの道のりは約500メートルくらい。

結構歩いた感はある。

かといって車を使うほどの距離でもない。これってお年寄りや足が不自由な方にはちょっときついんじゃないかな?

ゴルフのカートみたいなやつでピストン輸送するようなシステムがあればいいのにと思う。

外宮入口には大きな木々が生い茂る中、厳かに大きな灰色の鳥居が佇んでいる。

 

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鳥居をくぐり中へ。

外宮の中はたくさんの大樹が生い茂りつつ、しっかりと整備されて神事を行う厳格さというか少しだけ張り詰めたような空気も感じられて、まさに神々の住まう場所って感じでワクワクする。

 

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夏の強い日差しが大樹たちに阻まれ、ひんやりとした空気の木漏れ日の中を歩く。

この場所は僕が生まれる前からここにあって僕が消滅したあともこの場所に在りつづける。

なんて荘厳なのだろう。

 

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たぶん地元の人なのかな?信心深い人達が慣れた様子で鳥居をくぐるたびに礼をしていく。

その姿はつつましく美しい。

ありがたい光景だと思う。

この場所全体がありがたい空気に包まれている気がする。

 

驚いたのは観光名所にありがちな名所の説明みたいな立て札のようなものが一切なかったこと。

ここは観光地というわけではなく、神々のおわす場所に我々旅行者がお邪魔させていただいてるってことなんだなあと痛感する。

建物も装飾に凝ったような感じはなくシンプルで質素といった感じがする。

 

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伊勢神宮内宮へ。その美しさに圧倒される

外宮は一通り見て回ったので次は内宮へ行こう。

徒歩で行けるかと思ったが結構離れているので内宮へはバスで移動。

内宮入口の表参道に来てみて思ったのが、外宮に比べて人が多い。

外宮から内宮という順番でお参りするなら外宮にいた人と同じくらいの人数だろうと思っていたが、外宮にいた人の倍くらいはいるんじゃないかと思うほどの人数がいたように感じる。

 

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内宮だけって人もいるのか、内宮に人が集まる秘密があるのかはわからないけど、とにかくいってみよう。

五十鈴川にかかる宇治橋を渡って境内へ。

 

美しい境内に圧倒される。

神々が集い遊んでいるようなそんな庭。

美しい。

完璧に手入れが整っている庭のその芝の緑ひとつひとつがきらめいて見える。

 

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外宮はひっそりと厳かにっていうイメージだったけど、内宮は明るく華やかって感じだ。

外宮に比べ、高い樹木が少ないせいなのかもしれない。

正しい作法などはよくわからないが、一通りお参りは済ませた。

 

「神様お願いします僕の癌を治してください!!!」

なんて厚かましいお願いなどはせず、ただ 頭だけ下げてきた。

「困ったときの神頼み」なんて言うけど困ったときだけ信心深くなるのもどうかと思うし、さすがに厚かましすぎると思うので。

 

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ここからは観光ビジネスなのかな?お土産物屋さんひしめくおかげ横丁へ

人の流れに沿って境内を出て行くとお土産物屋さんがひしめく「おかげ横丁」に入って行く。

ああなるほど、ここから目いっぱい観光ビジネスをしていくのね。

メリハリが効いてていいと思う。

おかげ横丁についてはとくに下調べもしてなかったので適当にブラつく。

赤福、伊勢うどんなどなどの名物や、その他土産ものにありそうなものなどなど、売店がひしめいているがとくにこれといって欲しいものはない。

一人旅だから何か食べ物を買っても食べきれない、もしくはそれだけでお腹いっぱいになってしまうと思うと買うのをためらわれる。

でも、どんなものかひとくちでいいから試してみたいって気持ちはある。

そんな気持ちの観光客も多いんじゃないかな?

だから多少割高になってもいいから「ひとくち赤福」とか、「ひとくち伊勢うどん」とか売って欲しいなあと思う。

おかげ横丁を結構な距離歩いていき、もうそろそろ帰りたいなあって思った頃に衝撃的な立て札を見つける。

 

「これよりおかげ横丁」

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え?今までのは何だったの?

ただの商店街?

僕がおかげ横丁だと思って歩いてたところはニセおかげ横丁だった。(僕が勝手に勘違いしていただけで『ニセ』って訳でもないと思うが)

「これより おかげ横丁」 の立て札から右に折れ、真おかげ横丁(勝手に命名)に入る。

うーん、お店の感じはあまり変わりばえしないなあ。歩き通しでとにかく疲れた、喉乾いた、ソフトクリーム買った、うん美味い。

真おかげ横丁を適当にぐるぐる回っているとまたニセおかげ横丁に出た。

 

さすがに歩きすぎた…もう疲れた帰りたい。

ギブアップです。

人の流れに沿って歩いていると国道へ出た。

やった、助かった。

すぐさま伊勢市駅へのバス停を探しバスに乗って伊勢市駅へ。

伊勢市駅にはロッカーに荷物預けてあったから是が非でも戻らないといけない。

 

1日目が無事終了

伊勢市駅から近鉄特急でビジネスホテルを予約してる松阪へ。

なぜ松阪かというと、ただ単に伊勢神宮周辺のホテルが取れなかったので。

ホテルにチェックインすると今日一日歩き通しで疲れたからすぐ風呂を入れて入る。

そしてなんやかんやしてるとあっというまに10時過ぎ。 松阪牛を食べさせてくれる店を探す暇もなく、悔し紛れで近くの居酒屋へ 。

せっかく松阪まで来たので全国展開しているチェーン店には意地でもはいらないと思ったが失敗だった。

悔し紛れに入った居酒屋は注文しても来るの遅いし、待った割には大して美味しくない。

そもそもカウンターすらなかったから一人で来るようなところではなかったのかもしれない。

最後にほんのちょっとだけ悔しい思いをしたが旅の1日目は特に大きなトラブルもなく無事終了した。