44歳の僕がステージ4の大腸がんと診断されて

2016年大腸がん発覚。手術後、腹膜への転移が確認されステージⅣだと告知される。その後半年間に及ぶベクティビックス抗がん剤治療を受ける。2018年12月がん再発。アバスチン抗がん剤治療を受ける。48歳になりました。

総合病院での初めての診察。大腸癌の外科手術が出来るかどうかは不明

総合病院での初めての診察。大腸癌の外科手術が出来るかどうかは不明

この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2016年の5月下旬ごろに書いたメモをまとめています。大腸がんが発覚して町医者から大きな総合病院へ移りました。紹介状を見た医師の初見では手術できるかどうかは分からないということでした。

担当外科医師とのファーストコンタクト

2016年5月。

前回まで町医者で内視鏡検査を受けてその時に大腸がんが発覚した。今日は町医者で紹介状をかいてもらって診てもらうように言われた総合病院での初めての診察になる。

診察室に入った僕を迎えてくれたのは外科医のウエノ先生(仮名)。ぱっと見の年齢は50代後半くらい?の温和そうな表情の男性の先生だ。

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取り敢えず担当の医師がベテランっぽい先生だったので少し安心する。

若い医師が嫌い。というわけではないが、正直なところあまりいい印象がないことは否めない。

というのも、僕は数年前に左目が網膜剥離になってしまい、その手術を執刀したのが30代前半くらいの若い医師だった。

一度の手術ではよくならずに病院を変えては数回手術したのだが、どの手術の執刀も比較的若い医師で、どれも自分で納得のいくような手術結果ではなかった。

なのであまり若い医師に対して信頼感が無いのというのは正直なところだ。

それにどちらかというと経験が少なそうな若い医師よりも経験豊富そうな医師の方が良いに決まっている。

大腸がんの外科的手術ができるかどうかは不明

話は戻って診察室での会話の結論から言うと、紹介状に添付されていたデータからの所見では外科的な手術ができるかどうかはまだ分からない、ということだった。

先生のデスクの上にあるパソコンのモニタには、おそらく僕の内視鏡検査で撮った腸内の画像が表示されている。

それを見ながら癌の進行度や転移の危険性を説明してくれた。

最近の傾向としては外科的手術で癌を取り切れない場合は手術をしても患者の負担が増えるだけであまり意味がないと考え、メスを使わない抗がん剤治療や放射線治療をメインにした治療プランを薦めているようだ。

医師が時折言う「若いね」という言葉が気になる 

紹介状のデータや画像見ながら説明をするときに先生が時折「若いね…」とか「うーん若いねえ…」とか、そのようなワードをちょいちょい入れてくるのが気になった。

それは僕の年齢が大腸癌になるには若いのか、若いがゆえに癌の進行の速さを懸念しているのか、それとも癌で命を落とすには若いというニュアンスなのかどうなのか、詳しいことは怖くて聞いてみることができなかった。 

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先生は今日この問診のあとでエコーやレントゲンなどの検査をして、その結果を踏まえて手術ができるかどうかを判断する、と終始低いトーンで説明してくれた。

紹介状を見た先生の感じからして、あまり患者に対して楽観的なことは言うべきではないとの判断だろう。 

検査を待つ間、ひどく混乱した気持ちを落ち着かせるために自分自身にした質問

結構打ちひしがれた感じで診察室を出て移動し、エコー検査を受けるため検査室の前で名前が呼ばれるのを待つ。

待っている間、頭の中をいろんな考えが駆け巡る。

あー、怖い怖い怖い!!!

手術できないくらいひどい状態だったらもうおしまいじゃん!

死刑宣告じゃん!

それも転移しまくって苦しみまくった末にってことじゃん!

あーいやだなーそれだけはいやだなー 。

40なかばのいい大人が青くなって震えている。  

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診察室で先生は様々な可能性について話してくれた。

聞きながら気が動転していたせいか詳しくは覚えてないけど転移の可能性、癌細胞の別の臓器への拡がりや腸が腐るかも、とか最悪の可能性を様々な角度で話してくれた。

あーホントマジで怖い。

やっぱり、こういうこと聞いて冷静でいられるのはちょっと難しいのかも。

自分自身に質問をして今の気持ちを客観的に分析しようと試みる

気持ちを落ち着かせるために今どんな気持ちなのかを考えてみる。

  • 残念な気持ち
  • 悲しい気持ち
  • さみしい気持ち
  • 怖い気持ち
  • あきらめの気持ち

なんというかネガティブな気持ちのオンパレードだな…さすがにこの状況でポジティブなことは考えにくい。

でもこの状況でも考えられるポジティブなことがあるとすれば何だろう? 自分に質問してみよう。問いかけてみよう。

この困難な状況のなかで考えられるポジティブなこととは

Q.この状況下であってもポジティブなことが考えられるとしたらそれはどのようなことか?

  • どうせ先が無いのならもう仕事は辞める。もう仕事しなくていい
  • がん保険がおりるぞ
  • 手術もできないほど手遅れで余命宣告されたら新車でも買って(BMWがいいな)日本じゅうを見て回ろう
  • もうこれで世俗的な煩わしいことから解放される
  • 残りの人生の時間は好きなことだけやって生きるぞ(これは事故などで突然亡くなってしまう人には無いボーナスタイムだ)
  • 自分の人生を真摯に見つめなおせる
  • 人生観が変わる
  • 残りの人生を怠惰に生き難くなる

書き出してみると以外とあることに驚く。

不思議とこれらのポジティブなことを書いてるときは気持ちが楽になったような気がする。どちらにしろ自分が引いたカードが死神が描かれたジョーカーか、小さなハートが描かれたハートのエースなのかどうか今はわからない。f:id:yo_kmr:20180711045925j:plain

どっちのカードにしろ僕のカードだ。大切にしようと決めた。  

検査結果が告げられる。癌の進行度は?手術するのか、しないのか

たった今、何種類かの検査が終わった後、その結果を踏まえたウエノ先生の見解が僕に告げられた。先に結論から言うと手術の方向でいくそうだ

診察室に入って腰掛けた後、先生が低いトーンで口を開く。 

「大腸の癌の場合、近くの肝臓に転移していることが多いんですが…」 

僕は思わず息を飲む。あードキドキするドキドキするー…(肝臓に転移してたら終わり…肝臓に転移してたら終わり…肝臓に転移してたら終わり…)先生の次の言葉を待つ刹那、こんなことをぐるぐると考えてしまう。

次に先生の口から出る言葉によっては実質死刑宣告になるからだ。

肝臓のエコー写真を見ながら先生が続ける。 

「100%とは言えませんが、見る限り異常は無いようです」 

ぶふぇー、心の中で止めていた息を大きく吐き出す。クイズミリオネアの出演者ってこんな気持ちなのかな?「ファイナルアンサー」と言ったあとに司会者の声を待つ回答者のような気持ちで先生の言葉を待っていた。 

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しかし、十分に安堵の気持ちを味わう間も無く先生は言葉を続ける。

「あと、癌の側にリンパがあると身体中拡がってどうしようもなくなるんですが…」 

僕「………(ゴクリ…)」 

「そういったものも無いようですね。肺のレントゲンを見ても綺麗なものです。以上の結果を踏まえて手術の方向がいいと思います」 

あーよかったー、最悪の状況にならなくて。

ひとまずは少し希望が出てきたみたいだ。

それにしてもこの先生は最悪な状況を踏まえて話をすることを手放さない。

これは僕の勝手な想像だけど、もしかしたらこれまでうっかり患者さんに楽観的なことを告げてぬか喜びさせてしまったとか、そんな経験があるのかもしれない。

あくまでも慎重に、丁寧に言葉を選んで話しているという印象だ。

癌といえば生存率の低い難しい病気。

プロとしての姿勢としてはこういうことは当たり前といえば当たり前なのかもしれない。

そんな先生の厳然としたプロたる姿勢に、僕はとても嬉しくなった。

この先生でよかった。

そして癌の進行度についての言及はとくに無く、僕もその点をつっこんで聞く勇気はなかった。

手術する方向で決まったけど、まだまだ検査は必要

あとはまた後日に前回の内視鏡検査では調べることができなかった大腸の奥の方をX線検査で調べてから最終的に手術するかどうか判断することになった。

なぜ内視鏡検査で奥の方を調べられなかったかというとS字結腸にできた癌がじゃまでそれより先にカメラが進めなかったせいらしい。 

 X線検査の予定の打ち合わせをして今日の診察は全て終了となった。

最悪の場合、「手術もできないほどがんが進行している」ということも考えていたが、どうやらそこは回避できるようで少しだけ安心した。

それにしても今日はまだ何も食べてないし、安心したせいかすごくお腹がすいた気がする。もう午後の1時をとっくに回ってるし、早く何か食べよう。

会計を済ませ病院を出ると遅くなった昼食に何を食べようか考えながら早足で駐車場に止めてある車に向かっていった。