44歳の僕がステージ4の大腸がんと診断されて

2016年大腸がん発覚。手術後、腹膜への転移が確認されステージⅣだと告知される。その後半年間に及ぶベクティビックス抗がん剤治療を受ける。2018年12月がん再発。アバスチン抗がん剤治療を受ける。48歳になりました。

四国一周旅行3日目。四万十川から足摺岬へ【がん闘病記126】

この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2017年の5月中旬に書いたメモをまとめています。

四万十川で屋形船に乗る

2017年5月

四国一周旅行3日目。

今日は朝から四万十川の遊覧船というか屋形船に乗りに行くことにした。

前日からネットで下調べして屋形船の運行時間や場所をキチンと調べておいた。

午前9時の一番最初の便に間に合うように船着場に到着することが出来たのだが、お客は僕一人だけだった。

「えーどうなるんだろう…?」

と少し不安ではあったが、それでもかまわず船を出してくれるということで、なんだか少し申し訳ない気持ちで船に乗った。

たった一人僕を乗せた屋形船はゆっくりと船着場を離れ、出航した。

f:id:yo_kmr:20190310163250j:plain

船着き場の名前は四万十の碧(しまんとのあお)。

その名の通り四万十川の色は翡翠のように深い緑色だった。

www.shimanto-ao.com

川を挟んで両脇には小高い山々が連なり力強い緑を見せてくれている。

なんて雄大な景色なんだろう。

しばらくはその景色にため息混じりに見とれていた。

f:id:yo_kmr:20190310163319j:plain

f:id:yo_kmr:20190310163335j:plain

f:id:yo_kmr:20190310163354j:plain


屋形船の窓を開け、川の水に手をつけてみる。

そんなに冷たいというわけでもない。

開けは放った窓からは5月にしては冷たい風が船の速度に合わせて入ってくる。

水の上だから特にそう感じるのだろうか、少し肌寒いくらいだ。

しばらく船が進むと沈下橋の下を通り抜ける。

沈下橋というのは橋の両脇に柵が無く、川が台風などで増水した時に水の下に沈んで抵抗を受けないように設計されたものだ。

四万十川は暴れ川。

ひどいときは何メートルもの高さまで増水してしまうらしい。

f:id:yo_kmr:20190310163432j:plain

 

地元の人たちはその沈下橋を車で渡ったりするというので、船頭さんに

「車が川に落ちたりとかしないんですか?」

と聞いてみると、

「あー、たまに落ちますよ~」

とのこと。

「うえっ?落ちるんですか?」

びっくりだ。特に夜が危ないそうだ。

ある程度まで進むと船はUターンして1時間弱のクルーズは終了した。

これで大人一人2,000円だ。

正直、僕一人のクルーズでは赤字だろう。

だが、僕が船を降りると入れ違いで団体客が大勢わらわらとやってきたので、大きなお世話だがなんだかほっとしてしまった。

お昼ご飯を食べに「道の駅四万十とおわ」へ向かう

次は四万十川中流域にある道の駅「道の駅四万十とおわ」でお昼ご飯を食べようと思い、四万十川の道沿いを登っていく。

ここのレストランでは地元の食材を使った名物料理を出すらしい。

shimantotowa.com

道の駅に向かう途中、沈下橋があったので寄ってみることにした。

実際に車を降りて歩いてみたけど、なんだか狭い気がする。

f:id:yo_kmr:20190310163624j:plain

さきほどの屋形船の船頭さんは

「軽自動車くらいなら、すれ違うことができますよー」

と言っていたが疑わしくなる狭さだ。

f:id:yo_kmr:20190310163646j:plain

沈下橋も堪能したので再び車に乗って道の駅を目指す。

車に乗っていても分かるが四万十川の景色は雄大だ。

ゆっくりと水と時間が流れている。と思えばゴツゴツした岩肌に激しく水がぶつかりながら速く力強い流れを作っていたり。

そんな景色にいちいち見とれてしまう。

f:id:yo_kmr:20190310163707j:plain

f:id:yo_kmr:20190310163724j:plain


1時間か2時間くらい車を走らせ、ようやく目的地の「道の駅四万十とおわ」に到着した。

さて、お目当の食堂を探しているとなんか様子がおかしい。

よく見ると毎週水曜日は定休日だそうだ。

(※2019年現在は定休日は日曜日です。HPより)

そして今日はまごう事なき水曜日。

しかし、代わりに近所のおばちゃんたち有志が作る家庭料理のランチバイキングをやっているという。

f:id:yo_kmr:20190310163825j:plain

メニューを見ると大根の煮物、きんぴらごぼう、しいたけのたたき、酢の物などなど。

う~ん…言っちゃあ悪いがなんかパッとしないというか、お婆ちゃん家に遊びに行った時のご飯っぽい感じでちょっとどうかと思ったが、物は試しだ。という事で入ってみた。

地元のおばちゃんたちのランチバイキングは予想以上のものだった

店に入るとすぐ、レジ係のおばちゃんらしき人が「1,000円になります」と言ってきた。

どうやら料金先払いシステムらしい。

財布から1,000円を出し、おばちゃんに渡すとおばちゃんはそばにあったカゴにダイレクトに1,000円札をインしていた。

うーん、なんだか駄菓子屋っぽい。

店内を見渡すと、結構盛況でほぼ満席状態だった。

それでもそのレジ係兼案内係のおばちゃんが席をひとつみつけてくれて、なんとか座る事が出来た。

さっそく、プレート片手に料理を取りに行く。

こういう時、見た目とかで判断して沢山取りすぎると後で痛い目を見るのは既に何度も学習済みだ。

僕はもう大人なので変なテンションになって料理を取りすぎたりしないし、今回は一人旅なので食べきれなくなったら誰かとシェアする。なんてこともできない。

チョットづつチョットづつ慎重に色んな料理を取っていく。

今まで敬遠してた料理も味見のつもりで食べてみよう。

とりあえずひととおり取り終えて、席に着いてから食べてみると…

なかなか美味しいじゃないか!

特にこの地方独特の椎茸のたたきや山菜の天ぷらなどはめったに食べられない料理だ。

おかわりして食べていると僕が座ってる席の近くに先ほどのレジ係兼案内係のおばちゃんが立っていたのでいろいろと話を聞いてみた。

おばちゃんランチバイキングの裏話

聞けば毎週水曜日、道の駅の食堂が休みの時だけこの「おばちゃん手料理ランチバイキング」が開催されるのだが、そのおばちゃんたちは総勢8名くらいのチームで運営しているらしい。(※2019年現在、ランチバイキングは毎週日曜日に開催されているそうです。HPより)

前日から仕込めるものは仕込んでおいて、当日は早朝の6時から用意するそうだ。

料理を用意して午前11時の開店から午後2時の閉店までおばちゃんたちだけで店を切り盛りする。

そのおばちゃんチームも8名づつの4グループに分かれていて、週ごとに交代してまわしているそうだ。

そしてそれぞれのチームで味付けが微妙に違うらしい。

なので今回のおばちゃんグループにまた遭遇しようと思うと、次回は3週後になるのでレアといえばレアなのかもしれない。

しかし、この取り組みは実に素晴らしいと思う。

僕が思うに観光客はその地の名物などの「観光客用の食事」をもちろん食べようとするのだが、一方でその土地の人達が日常食べているその土地ならではの食べ物も食べてみたいと思うものだ。

このランチバイキングのメニューは一見派手さはないが、この土地独特のメニューとこの土地ならではのおばちゃんたちが作っている。

きっといつもおばちゃんたちがそれぞれのご家庭で作っている料理そのものなのだろう。

よっぽどの図々しさがなければTVのリポーターじゃあるまいし旅先の田舎の民家をいきなり訪ねて

「チョットご飯食べさせて~」

なんて言えない。

でもここではそれと似たようなことが出来る。

おばちゃんたちが普段から家族みんなで食べてる物が食べられる。

よくよく考えると大人一人1,000円という値段も破格の安さだ。

お金を受け取ったおばちゃんが売り上げ金をザルに突っ込んでいたのを見て、計算しやすくお釣りも渡しやすいようにとの値段設定という面もあるだろうけど、8人のおばちゃん達の日当を出そうと思ったら材料費などの原価を含め1日に相当数のお客をさばかないといけないだろうから。

それも午前11時から午後2時までの間で。

メニューの豊富さを見てもおばちゃん達のやる気が伝わってくる。

やる気のないバイキングレストランにありがちな、閉店間際とかではメニューが少なかったり、サラダとかでごまかしたりして、やる気がないのがすぐ分かってこっちも気が萎える事が多々あるがここではそんなこともない。

さらに味噌汁に使う味噌なんかもおばちゃん達の手作りだそうだ。

おばちゃんの話によると、この道の駅も出来た当初はそんなに客足も伸びなかったみたいだけど、今ではおばちゃん達の取り組みが功を奏してか口コミが広がって客足も伸びてるそうだ。

その話も十分に納得できる。

ここには観光客用のビジネスではなく「もてなそうという気持ち」がある。

だから上手くいっているのだと思う。

観光客価格に対する嫌悪感

僕は常々旅行先でお金を使う事に少し抵抗があったように思う。

それはいわゆる「観光客価格」というものに対する嫌悪感だろう。

全てがそうだとは言わないけれど、その土地の事を何も知らない観光客が割高な買い物をさせられ、地元民はそこには決して近寄らない。なんてことはよくある。

それどころか観光客用の高い買い物をする観光客を見て、

「よくあんな高いもの買うよね」

と嘲笑する地元民たち。

そんな不条理というかフェアではない商売になんらかの違和感を感じていた。

近年は昔と違い、インターネットで情報が瞬時に行き交うのでそんな手法は通用しなくなってきている。

誰に対しても真摯に誠実な姿勢で商売をしないとすぐにそっぽ向かれ、無視される。

今回訪れた道の駅のおばちゃん達はまじめに誠実に取り組んでいる。

その証拠に僕が食べている間も食べ終わって出て行くお客さんの多くが入り口近くにいるレジ係兼案内係のおばちゃんに「おいしかった、ありがとう」と声をかけていく。

多くの人がおばちゃん達の真心に触れてそれを感じ取ったのだろう。

僕も例に漏れず食べ終わって店を出る時には

「ごちそうさまでした、いい思い出ができました。ありがとうございます!」

とおばちゃんに声をかけて出て行った。

その時のおばちゃんはとても嬉しそうで、その破顔した笑顔はまた僕を温かい気持ちにさせてくれるのであった。

またあのおばちゃんたちに会いたい、おばちゃんたちの作ったご飯が食べたい。

そう思ったし、誰かにことのとを伝えたくなった。

口コミってこうしてできていくんだろうな。

 

フィギュアを見に海洋堂ホビー館四万十へ向かう 

次はまた四万十川沿いの道を走って海洋堂ホビー館四万十に行く。

ksmv.jp

しかし四万十川は長い。

さっきおばちゃんが言ってたけど四万十川は全長100キロ以上あるそうだ。

川沿いの山道をずーっと川ばかり見ながら運転していると流石に飽きてきた。

ところどころに点在する沈下橋も最初の方はいちいち立ち寄ってたけど、だんだんどうでもよくなってきた。

「あ、また沈下橋か…もういいや」といった感じで。

1時間以上車を走らせようやく海洋堂ホビー館四万十に到着した。

さすがに「日本一へんぴなところにある展示場」というだけあって辿り着くまでにちょっと苦労した。

入場料大人1名800円なりと。

f:id:yo_kmr:20190310164718j:plain

中には海洋堂という会社がこれまで手がけてきたフィギュアやプラモデルが展示されていた。

中でもチョコエッグのおまけのフィギュアが沢山展示してあり、お好きな方にはたまらない世界だろうなと思ったが、僕はもうあんなへんぴな場所に数時間かけてしかも800円も出して行こうとは思わない。(※個人の感想です)

f:id:yo_kmr:20190310164738j:plain

f:id:yo_kmr:20190310164747j:plain

f:id:yo_kmr:20190310164800j:plain


ここから四万十市に戻るのだが来た道よりも帰り道の方が大変だ。

山を越えてぐねぐねした細い道をとおり、見通しの悪いカーブが何度も続くので運転しててとても疲れる。

そんなこともあって余計に

「もうあんなへんぴなところには2度と行かない」

とまた決意を新たにしたのだった。(※個人の感想です)

 

足摺岬へ

さて午後4時も過ぎたしそろそろ今夜の宿を決めないと。

明日は高知市周辺を観光しようと思っているので高知市内のホテルを探すが、またことごとく満室だ。

ならばと足摺岬から少し離れた町のホテルを探すとやっと空室を見つける事ができた。

うーん、やっぱり当日の夕方からホテル探すのは無理があるのかな?

行きあったりばったりのてきとう旅行なので、前日からなかなか予定がキチッと立てられないのが困りどころではある。

とりあえず今日の最終目的の足摺岬まで行ってみる事に。

着いたのは午後6時を回っていた。

行ってみて思ったことは、夕方に観光地に行ってもなんだかあまり面白くない。

お土産屋さんも閉まっているし、観光客もほとんどいなくてなんかさみしかった。

でも、景色は素晴らしくゴツゴツと切り立った岩肌が迫力があり太平洋の深いブルーとあいまって雄大な景観を見せている。

f:id:yo_kmr:20190310164631j:plain

f:id:yo_kmr:20190310164642j:plain

f:id:yo_kmr:20190310164653j:plain


はてしなく続く水平線を見ながら

「昔の人はこの先にまた別の陸地があるなんて思ってもみなかったろうな」

なんて妄想をひとりでしていた。

う~ん、一人旅はやっぱり寂しいかも…こんなとき誰かが隣にいて

「うわーすごい景色だね」

って言うだけで楽しいんじゃないかな。

 

 

明日は朝から祖谷渓(いやけい)を目指す事にする。

ここからはチョット遠いけど、頑張って行ってみよう。