1クール目の抗がん剤治療での入院最終日。投薬終了【がん闘病記34】
この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2016年の7月初旬ごろに書いたメモをまとめています。
1クール目(1回目)の抗がん剤投薬の最終日
2016年7月。
早朝5時ごろ、病室のベッドの上で目が覚める。
昨晩は10時くらいに寝たからこの時間に目が覚めても別に不思議ではない。
消灯後もダラダラ起きていてもしょうがないので睡眠導入剤(ゾピクロン)をもらってさっさと眠ったほうがいい。
そういえばゾピクロンの管理は他の薬とくらべて厳しいようで、夜勤の看護師さんは毎回1錠づつしかくれないし、服用するときも看護師さんの目の前で飲むか薬の入っていたシートを必ず回収していった。
そしないと飲んだふりしてこっそり貯めておいてから一気に大量に服用してしまう人とかがいるのかもしれない。
早朝5時はさすがに早すぎかもしれないが、とはいえ早寝早起きって真面目に生活してる感じがするし、早く起きたことで得した気持ちにもなる。
それになんだか気分がいい。
今朝の目覚めはいつも自宅で感じていたような「悲しい気持ちに包まれながら起きた」っていう感じではなかった。
なぜだろう?
病院にいる安心感?
それとも抗がん剤による副作用が自分にどう作用してるのか気になって、意識が気持ちよりも身体の感覚の方に向けられたせいなのか?
もしくは抗がん剤の副作用が思ったほどキツくなかったから?
あくまで今のところはって話だけど。
食欲の方にも注意を向けてみる。
先ほど朝食も済ませたけどさすがに「お腹ペコペコだー」って感じはなく、ちょっとだけ食欲の減退がみられるみたいだ。(もしかしたら気のせいかもしれない)
とはいえ用意された朝食の8割くらいは食べたと思う。
朝マックくらいなら完食できそうだ。
手術後から体重は5キロ以上減った
そういえば僕は前回の大腸がんの手術・入院で結果的には体重が5キロ以上減った。
他の人には決しておすすめできない「大腸癌手術ダイエット」の成果だ。
しかし手術後、約2週間の入院生活ののち退院してからは「先生から特に禁止された食べ物」もなかったので、消化吸収のいい物なら好きなものばかり食べてた。
大腸がんの手術後の絶食中にメモしておいた「食べたいものリスト」(ざるそば、ハンバーガー、ラーメン、カレーライスなど)を忠実に実行した結果、3キロくらいリバウンドしてしまった。
退院直後はそれなりにげっそりしていて、退院食後に会った人からは
「なんだか痩せたねえ…」
と心配され、病人としての悲壮感?悲愴感?なるものも一応はかもし出してはいたが、リバウンドしてからは
「あれ?あんまり変わってないねえ」
と悲愴感も何処へやら行ってしまったようだ。
元来僕は食い意地が張っている。
この度、癌になったことでの闘いがあるとするならばそれは
「抗がん剤の副作用vs僕の食い意地」だと思う。
身体的にどんなに追い詰められても食い意地だけは無くならない、へこたれない気がする。
そんな食い意地を今まで卑しく思っていたが、今ではたくましい相棒のようにも思える。
薬剤師さんに明るく接してもらうと助かる
そうこうしているうちに時刻は10時を過ぎたころ、担当の薬剤師さんが様子を見に来てくれた。
「どうですか、調子は?」
「いやあ、今のところはどうってことないですね。ちょっとだけ食欲が減ったかなってくらいで」
「そうですかあ、食欲がなくなったりするのは退院してから3~4 日位までがピークであとは持ち直してくると思います。もっとも、人によっては『何ともないよ?』なんておっしゃる方もいますけどね(笑」
僕もその『何ともないよ?』のグループに入りたいものだ。
それと薬剤師さんが言うには、退院後一週間目くらいが白血球が下がりやすい時期なので風邪とかこじらせたらスグに連絡して対応してもらうよう気をつけてくださいとのことだった。
薬剤師さんは終始明るい調子で元気よく話をしたあと病室を後にした。
明るく接してもらえるとこちらとしても助かる。
おためごかしはいらないが基本、ネガティブで気分が暗くなるようなことばかりを病院では聞くことになるので。
投薬終了
午後4時ごろ、3日に及ぶ抗がん剤の最後の点滴が今終了した。
今のところ副作用の自覚はあまり無い。
- 吐き気ナシ
- 倦怠感は気のせいレベル
- 手足の痺れナシ
- 肌の異変ナシ
今までさんざんビビってた割にはまだ自覚できる副作用は出ていない。
気になることといえばお腹の辺りがほんの少しだけチクチクと微かに痛いくらいだ。
前回の手術の痛みなのか、腹膜に転移している癌に反応しているのかは分からない。
右鎖骨の下あたり。僕の身体の中に埋め込まれたリザーバーから点滴針が抜かれると気持ちが楽になる。
やはり終始点滴の管につながれた状態ではうっとおしく感じるのは仕方がない。
それが外れてなんだか解放された気分だ。
身支度を整え、会計を済ませてから病院を後にする。
次はまた2週間後の入院になるので長い一時帰宅といった感じもしないでもない。
1クール目の抗がん剤投薬を終えて
3日間に及ぶ抗がん剤治療の投薬をやってみたけど、「抗がん剤は怖い」そんなイメージが少しだけ和らいだかもしれない。
少なくとも今の僕はフラフラの状態ってわけでもない。
全12クール(予定)のうちの1クールが終わっただけでまだ始まったばかりだけど、とにかく一歩前に進んだ感じはする。
残り11回でスパッと終了できればいいのだけど、先生の話だともしかしたら12回ではすまないかもしれないなんて言ってたから心配だ。
おかわりなんてしたくはないけどこれから抗がん剤が僕の身体にどう作用してくるかにかかっているだろう。
免疫力向上を期待して瞑想を習慣化する
退院後、自宅に戻ってひと休みした後に最近の習慣として取り入れている瞑想をする。
なぜ瞑想かというと、免疫力についていろいろ調べていると免疫力を上げるのに瞑想が効果がありそうだという記述をネットのどこかで見たからだ。
とはいっても、ただ椅子に静かに座って目をつむり意識を呼吸に向けるという簡単なものだけど。
瞑想中はなるべく心静かにしてようとするがいろいろな考えや想いが浮かんでは消えていく。
そんななかふと、以前お世話になった社長さんに挨拶に行ったとき「幸せな癌患者になります」と宣言したことを思い出す。
幸せイコール愛だったら僕は愛そのものになりたい。
そう思えた時に身体中に散らばった癌細胞たちひとつひとつが「愛」という文字に変化するイメージが湧いた。
ああ、そうか癌は愛だったんだ、僕に本当の人生を見せてくれた、道を示してくれた愛そのものだったんだ。
ありがとう癌。
この苦しみも喜びを知るためのもの。
甘さを知るには苦さを、熱さ、暖かさを知るには冷たさ、寒さを知らないといけない。
潤いを感じるには先に渇きを体験する必要がある。
命を。「生」を感じるには「死」を感じる必要がある。
よりリアルな、質量をともなった「死」を。
癌に対して深い感謝を感じた時、僕の目から涙がとめどなく溢れてきた。
悲しみからでもない、痛みからでも恐怖からでもない。
感謝からの涙。
そう感じれた事に嬉しくなり、また輪をかけて涙が溢れてくる。
不思議だと思う。
人が聞いたらきっとヘンに思うだろう。
「癌に感謝して涙?何言ってんの?」と 。
だからこの事は書くのを少しためらった。
でも本当にそう感じたんだからそうなんだ。
少なくとも僕の中ではそれは確かに起こった。
誰が信じようと信じまいとそれは一向にかまわないことだ。