46歳の誕生日を迎えることができたがその数日後には謎の高熱にうなされる【がん闘病記131】
この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2017年の7月上旬に書いたメモをまとめています。
46歳になりました
2017年の7月某日。今日で46歳になった。
さすがにこの歳になると誕生日プレゼントを待ちわびているわけでもないので、自分の誕生日が来たのはいいけれど、何歳になったのかが分からずに昭和46年生まれは何歳なのかネットで調べたぐらいだった。
46歳になった自分。
今日のこの日が迎えられるとは癌治療の真っただ中にいたときには考えられなかったことだった。
いや、全く考えなかったと言えばうそになるのかもしれない。
正直なところ去年の今頃の僕は大腸癌の摘出手術後に抗がん剤治療を開始したばかりだったので、1年後の自分がまだこの世界に留まっていられるかどうかは半々だと思っていた。
生きているかもしれないし、死んでいるかもしれない。
もしくは生きてはいるけど、かろうじて生きている状態なのかもしれない。と思っていた。
去年の今頃、がんと診断され、ステージⅣのがん進行度だと告知された僕にとっては自分の人生がそう遠くない未来に終わりを告げるかもしれない領域にいると思っていた。
今もその領域にいることはあまり変わりないと思っている。
自分が癌の呪縛から完全に解放された「がんサバイバー」になったなんてとても思えない。
再発の二文字に怯える日々
ちょっとでもお腹が痛くなったり体調が悪かったりすると癌の再発を疑ってしまう。
「再発」と言う二文字に警戒し過剰に反応し、常に怯え、狼狽している。
そもそも「再発」という言い方すら適当ではないのかもしれない。
もしかしたら癌は「潜伏」している状態なのかもしれない。
今現在、僕の身体の細胞一つ一つがどういう状態であるかは僕自身にも分からないし、現在の科学技術では何兆個ともいわれる身体の全細胞を個別に調べる術はない。
僕の身体の中の癌細胞は抗がん剤によってすべて死滅したのか、それとも極めて小さくなっただけで今はふたたび徐々に大きくなっている最中なのか、それは全く分からない。
でも今日という日を迎えられたのはうれしい。
誇らしい気分でもある。
この世界に生れ落ちて46年の歳月を生きることができた。
僕にとっては新記録達成だ!
誰にとっても誕生日は…、いや誕生日に限らず新しく迎えた今日一日は新記録達成なんだ。
よろこばしいことだ。
うれしいことだ。
この世界でもがいて足をバタつかせて今日まで泳ぎ切った記録だ。
確かに存在した僕の道程なんだ。
謎の高熱にうなされ続け、腫瘍熱の可能性を疑う
2017年の7月。
ここ数日謎の高熱が続いている。
低いときでも38度弱、高いときでは40度以上ある。
あさってには病院で2ヵ月ごとの血液検査とCT検査の予定なので、タイミングとしてはちょうどいいといえばいいのかもしれない。
目立った風邪などの症状も無く、ただ単に高熱が続いているだけなので不安になり、ネットでいろいろ検索してみると腫瘍熱の可能性があるみたいだ。
末期がん患者に見られるものらしい。
もしこの高熱が腫瘍熱なら僕の命はそう長くはないだろう。
「ああ、僕は死んでしまうんだな」
あきらめ、悲しみ、悔しさが入り混じってそんなことを思ってしまう。
情けない話だが癌患者はナイーブだ。ちょっとのことでも生死に関わるので大いに動揺してしまう。
2ヵ月前の検査では異常がなかったのに、こんなに短期間で癌は進行してしまうのだろうか?
可能性はゼロではないだろう。
腫瘍熱。
先日亡くなった元アナウンサーの小林麻央さんにも同じ症状が出ていたそうだ。
この高熱が風邪の症状からくるものであればたいした心配はしなくていいだろう。
でも今の僕の状態は扁桃腺が腫れているでもなく、鼻水が出るとかお腹の状態が悪いとか頭痛がするなどといった、よくある風邪の症状が全く見られない。
ただ、原因が分からない高熱が続いているだけ。
腫瘍熱の症状によく似ている。
こんな高熱はいまだかつて経験したことがない。
そして時折わずかだが腹部と腰回りに違和感を感じる。
腹膜まで転移した癌が増殖と浸潤を続けているせいなのだろうか?
もしそうなら僕はもう死を覚悟しなければならないだろう。
もしそうなら最後に母に最大限の感謝の言葉と親不孝することを詫びよう。
もしそうなら弟と妹に感謝の手紙を書いておこう。
僕が死んだら読んでもらうようにして。
あと、入院が長引くようなら思い切ってノートパソコンを買ってモバイルwifiも無制限のプランに変えよう。
あああ、もっと生きたかった、たいしたことない、全然たいしたことない人生だったけど、もっと生きたかった。
そういえば妹が2人目の赤ちゃんを身ごもって来年の2月くらいに出産予定だってこないだ聞いたけど、その子の顔も見れそうにない…
ひと目その子に会いたかった…
無念だ…
しばらく僕から遠ざかっていたと思っていた「死」という存在。
冷たく重くざらついた巨大な鉛のような「死」という存在が突然また僕の目の前に姿を現した。
斜め後ろから突然僕の目の前に現れたような感じだ。
全く油断していた。
「たのむから消えてくれ」
硬く目を閉じて高熱にうなされながら僕はそう願うしかなかった。
とにかく明後日の血液検査とCT検査ではっきりするだろう。
どうかたいしたことありませんように…