44歳の僕がステージ4の大腸がんと診断されて

2016年大腸がん発覚。手術後、腹膜への転移が確認されステージⅣだと告知される。その後半年間に及ぶベクティビックス抗がん剤治療を受ける。2018年12月がん再発。アバスチン抗がん剤治療を受ける。48歳になりました。

担当の薬剤師さんに感謝の気持ちを伝える。アバスチン2クール目の投薬2日目

この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2019年の1月上旬に書いたメモをまとめています。

入院2日目の朝。昨晩よりはマシといったところ

2019年1月。

アバスチン抗がん剤2クール目の投薬での入院2日目

朝、7:00ごろ起床。目が覚めて体調に目を向けると昨晩より気分はいいように感じる。やはり、以前受けたベクティビックス抗がん剤の時と同様に夜になると調子が悪くなって、朝は幾分復調するという波があるみたいだ。

朝食の配膳が来たけど、果物を少しかじるくらいでやめておいた。

しばらくすると看護師さんが来て朝の検温と血圧の測定。血圧は上が113、体温は36度5分と特に異常はないみたいだ。

ちょうど看護師さんと入れ替わりで今回から担当医になったアマキ先生が病室まで様子を見に来てくれた。

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「調子はどうですか?」

「そうですね、やっぱり夜はかなり気分が悪くなって朝になると持ち直すって感じですかね。なので夜は眠剤飲んで早めに寝て苦しい時間に起きていないように心がけています」

「それはいいですね、それと今回吐き気の原因になりそうな薬の量は少し減らしておきました。ウエノ先生のオーダーでもフルドーズよりちょっと少なめでしたが、それよりも減らしてますよ」

「あー、ありがとうございます。いや、前回があまりにもキツすぎたんでとても混乱して『こりゃアカン続けるの無理だ』って思ったくらいなので助かります」

「ちょっとこれで様子見てみてください。何か異常などありましたらすぐに言ってくださいね」

そう言って先生は病室を後にした。 

強い吐き気の原因はイリノテカン

その後しばらくすると今度は僕の担当のカワノ薬剤師さんが病室まで様子を見に来てくれた。

薬剤師さんは僕を見て開口一番、

「うわあ、髪切りましたねー。イメージ変わりましたねー」

と驚いた様子。

「いやあ、どうせこの先ハゲるなら、とバッサリ切りました(笑」

「そうだったんですねー(笑。あ、それと調子はどうですか?」

「昨晩はつらかったんですが朝は割と調子いいです」

「そうですか、一応今回から吐き気の原因と思われる『イリノテカン』というお薬を少し減らしています」

「イリノテカン…ですか?」

「はい、アバスチン自体にはあまり副作用として吐き気の症状は見られず、組み合わせて使うお薬のうち、前回のベクティビックスの時は使わなかったイリノテカンに吐き気の症状が出る人が多いのでそれを少し減らしました」

「へえ、そうだったんですね」

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「それと今回からは内服薬で吐き気どめの薬を追加で用意したんで、それで少しでも軽減できればと思います」

「ああ、あの大きな薬(イメンド)ですか?」

「そうですそうです(笑。一応1日中効果は持続するんで朝は平気でも飲みきってくださいね。それと下痢はどうですか?」

「下痢ですか…」

僕はおもむろに以前に薬剤師さんからもらった小冊子「アバスチンダイアリー」を取り出して、メモしていた経過を見る。(アバスチンダイアリーは副作用の症状をメモする専用の小冊子)

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「おお!ちゃんと記録してるんですねー」

「はい、下痢は投薬後の休薬期間3日目くらいから出始めてますね、4日間くらい続いてあとはおさまっている感じです」

「そうですか、あれでしたら自宅で飲む用の下痢止めのお薬をお出しできますが…」

と、薬剤師さんは提案してくれたが、前回もらった薬がまだ残ってるし、僕としては下痢よりも便秘の症状の方が怖いので、できるなら下痢止めはよっぽどでない限りは飲みたくない。そういった理由から薬剤師さんには

「いえ、まだ前回の薬が残ってるから大丈夫です」

と、言っておいた。

抗がん剤投薬開始から癌細胞に薬が作用する時間

それともうひとつ、僕は薬剤師さんに聞いてみたいことを聞いてみた。

「ちょっと聞いてみたいんですけど、抗がん剤が投薬開始から実際にがん細胞に作用する時間ってどれくらいですか?」

「そうですね、お薬は血液を通して直接体内に回っていますので、割とすぐですね。人によっては投薬開始してからすぐ気分が悪くなるなんて人もいますしね」

「そうですか、じゃあ投薬開始してすぐにがん細胞に作用するんですね」

「いえ、そういうわけではないんです」

「えっ、どういうことですか?」

「どの細胞にも言えるんですが、細胞には活動期、分裂期、休眠期、というものがあって休眠期にはなかなかお薬が届きにくい状態なんです

「がん細胞もそうなんですか?」

「がん細胞もです。そう言った理由から抗がん剤の投薬は休眠期のがん細胞を逃さないように長時間かけて行われるんです」

「なるほど~、納得しました。ありがとうございます!」

確かに今やっている抗がん剤は最後の投薬なんて40時間以上かけて行われる。

時間がやたらに長い理由はそういうことだったのか。

薬剤師さんに感謝の気持ちを伝える

そしてちょっと照れくさかったけど、僕は2年前に言えなかったカワノ薬剤師さんへの感謝の気持ちをこの話の流れで言っておくことにした。

ちょっと照れくさいけど。

「でも、カワノさんみたいに分かりやすく説明してもらえると助かります。特にカワノさんのすごいところはネガティブなことを明るい口調で伝えてくれるところです」

「いえいえ、僕なんて…」

「抗がん剤の副作用とかはたいていネガティブなことじゃないですか、吐くとか下痢とかハゲるとか…、そんなことをちょっとでも明るい口調で伝えてもらうと患者のこっちとしてはかなり気が楽になります。そして話を聞く姿勢もしっかりしてるし感謝してますよ」

「いえとんでもないです。ありがとうございます。また何かお困りのことがあればいつでもおっしゃってください」

と、少し照れた様子で薬剤師さんは病室を後にして行った。

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ウエノ先生からも信頼されていた薬剤さん

カワノ薬剤師さんは僕の前任の担当医だったベテラン医師のウエノ先生も認めていた優秀な人だ。ウエノ先生は病院を退職される前に

「最後まで診れなくてすみません。でもカワノさんがいますからね」

と言っていた。短い言葉だけど彼への信頼が見て取れるひとことだった。

僕も彼は頼りになると思っているし、いつも明るい雰囲気で接してくれて親身になってくれるのが分かる。話を聞いてくれているときの真摯なまなざしがそれを物語っている。

そんな人たちにサポートされて治療ができる僕は幸せな癌患者なんだろうなと改めて思った。