44歳の僕がステージ4の大腸がんと診断されて

2016年大腸がん発覚。手術後、腹膜への転移が確認されステージⅣだと告知される。その後半年間に及ぶベクティビックス抗がん剤治療を受ける。2018年12月がん再発。アバスチン抗がん剤治療を受ける。48歳になりました。

癌関連の書籍を読む【がん闘病記26】

この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2016年の6月下旬ごろに書いたメモをまとめています。

癌関連の本を読んでみる「がんでも長生き 心のメソッド」

2016年6月。

ここ数日、気持ちの方もだいぶ落ち着いてきて、癌に関する情報もいろいろ自分で調べてみようと思うようになり、ネットの通販サイトAmazonで癌に関する本を購入し読んでみる。

そして最初に選んだのがこの一冊。

 

がんでも長生き 心のメソッド

今渕 恵子 (著), 保坂 隆 (著)

 

この本を選んでる時の僕は気持ちの落ち込みのどん底のところから回復しかけているときで、とにかくポジティブなものに触れたかったと切望していたのだと思う。

タイトルにもある「がんでも長生き」というポジティブな部分に強く惹かれたのと、購入された方々が書くカスタマーレビューがポジティブなものが多かったので購入してみた。

本書は精神腫瘍科(せいしんしゅようか)の医師である保坂隆氏と自身もステージ4の癌患者であるコピーライターの今渕恵子さんとの対話形式でつづられている。

なので大変読み進め易く、一般人にとっては小難しく感じる医学用語などはあまり使っていなくてあっという間に一冊読み終えた。

率直な感想を言うと、なんというか「あたたかい本」だなあというのが自分が感じた第一印象だった。

この本のいいところは僕を含め癌患者からの共感を得やすいステージ4の癌患者である今渕さんが癌に関する疑問を投げかけ、その疑問に専門家である保坂先生が答えるという形式なので、まるで自分の疑問に答えてもらってるような気になってくる。

僕も癌を告知されて分かったけど、告知を受けた大多数の癌患者は怯えている。

大多数の癌患者が専門的な知識も持ち合わせず、今までの自分の人生の中で他に人たちから聞きかじってきた情報やテレビや新聞などのマスコミから受ける情報だけをたよりにしている。

それに加えてテレビドラマや映画など受け手の感動や悲しみの情動を目的とした癌をテーマにしたフィクションまたはノンフィクション作品から受けるイメージ。

それらがあたかも自分の人生において真実なのだと信じ込み、自分も御多分に漏れずそうなるのだと、その幻想を信じて疑わずに怯えて過ごしているのだと思う。

本来、癌に関して最も有益で信頼がおける情報を持っているのは日々最新の論文に目を通し、最新の実験結果を検証し続けている専門家たちであると思う。

すべての医師たちがそうだとは言わないが少なくとも医学に関して基礎的な訓練や教育を受けてない人間から比べたらその差は歴然だと思う。

僕たち癌患者は怯えている。

訳も分からず怯えている。

自分が作り出した幻想・幻影に怯えている。

その恐怖の源泉がどこにあるのかさえよく分からないまま怯えている。

薄靄の中に隠されたその恐怖の源泉を探しに行くのでさえ足がすくんで身動きも取れないまま、その場で立ちすくんで怯えている。

そんな恐怖の源泉を今渕さんが見つけて「先生これってどうなんですか?」と問いかけ、専門家の保坂先生が明確に答える。

学術的データをもとに客観的に答えてるので納得も得心も出来て心が軽くなる気がする。

何よりこの本は愛情にあふれている。

著者お二人の「苦しんでいる癌患者の皆さんの役に立ちたい」という愛情にあふれている。

そんなあたたかい気持ちにそっと触れられたようなそんな読後感があった。

この本を読み終えて本を閉じたとき僕はきっと微笑んでいたと思う。

「あたたかい本」に触れられて、とってもうれしくなったから微笑んでいたんだと思う。

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癌関連の本を読んでみる「がんを告知されたら読む本―専門医が、がん患者にこれだけは言っておきたい“がん"の話」

二冊目に選んだのはこれ。

がんを告知されたら読む本―専門医が、がん患者にこれだけは言っておきたい“がん"の話

谷川啓司 (著)

 

この本は癌に関する基礎的な知識が平易な表現でわかりやすく説明してある読みやすい本だ。

がん進行度ステージ4の告知を受けてすぐのころの僕はとにかく「癌=死」というイメージにすっかり屈服して怯えきっていた。

癌というものに対してまったく直視できない状態。

目を背け耳を塞いで小さく丸まってガタガタ震えてるだけだった。

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その状態にも少し慣れ、薄目を開けてちょっとだけ癌の方を見てみようかな?と思ったときに手に取った本がこれだった。

 

読み進めていくと「あーなんだ、そうだったのか」と自分の中の固定概念が取り去られるのがわかる。

それほどまでに専門家が語る情報には説得力がある。

癌に関する情報はやっぱり怖い。

そりゃそうだ、ほとんどがネガティブな要素で包まれてるから。

「癌になったらお金が貯まりました」とか「成績がグングンアップしました」なんてポジティブな要素は皆無だ。

癌に対して目を背けていたころの僕は「癌に関する情報」は鋭いトゲだらけで触れるときっと痛い思いをするだろうと思い込んでいた。

確かに鋭いトゲはある。

ネガティブな要素という鋭いトゲが「癌に関する情報」にはあることは確かだと思う。

でも正しい知識や情報を知ることでトゲに刺さらない場所を持って扱うことができる。

いたずらに自分を傷つけるものではないということを知ることができれば不安や恐れは明らかに少なくなる。

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この本を読んで癌細胞自体には毒性があるわけでもなく、ただ増殖を繰り返すだけでその塊が大きくなることで身体の機能に影響を及ぼすことになることを知った。

ただ増えるだけ。

癌細胞は虫歯菌みたいに僕の骨をとかしたりしないし、身体の一部をどんどん腐らせたりはしない。

ただそこにくっついて増えるか増えないか、それだけのことだった。

(上記の点は癌に関して専門的な教育も訓練も受けていない僕が本を読んだうえでの印象を語ってるに過ぎないことを留意しておいてほしい)

 

癌は恐ろしい病気であると思うことに今も変わりはない。

ただ、これらの本を読んで思ったことは真っ白な薄靄の中を手探りで歩いていくような怖さではなくなったということ。

僕は癌治療の専門家でもなんでもないけど本を読んで浅いながらも知識を身につけ、それによって自分の中の恐れや不安がほんのちょっとでも軽減できればそれに越したことは無い。