5クール目の抗がん剤治療での入院とステージ4の癌だと人に打ち明けたときの反応【がん闘病記59】
この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2016年の9月初旬ごろに書いたメモをまとめています。
5クール目の抗がん剤治療のため入院する。初日
2016年9月。
5クール目の抗がん剤治療のため、いつもの総合病院に今日から3日間入院する。
いつもどおり総合病院に到着すると自動受付機で受付を済ませ、採血の窓口に直行して血液検査を受けてから外科外来で担当医のウエノ先生の診察を受ける。
待合ロビーで1時間以上待ってから診察室に呼ばれる。
血液検査の結果から白血球などの数値は問題ないようなので5クール目の抗がん剤治療を予定通り行うことになった。
腫瘍マーカーの数値も範囲内ということで少し安心した。
(※腫瘍マーカーとは癌の種類によっては癌細胞が体液中に測定可能な特徴的な物質を生成することがあり、その血液中の数値を測定するもの)
それから今後の予定として、もし6クール目の抗がん剤治療が無事に終われば予定の半分をまできたということでCTの検査をすることになった。
僕の場合は腹膜播種という症状で癌が大腸の内部を突き抜けて内臓を覆う腹膜に細かく散らばっている状態なのでCT検査で把握できるかどうかよく分からないかもしれないが受けてみないことには分からないようだ。
どうか癌が大きくなっていませんように…
ベクティビックス抗がん剤の副作用で抜け毛があるのか聞いてみる
そしていま現在僕の身体に起きている副作用について担当医のウエノ先生と話した時、最近気になっている「脱け毛」について聞いてみた。
先生が言うには、今僕が受けているベクティビックス抗がん剤は一般的にあまり抜け毛の症例は見られないけど抗がん剤はいわゆる細胞毒なので毛根の細胞がダメージを受けてその影響が出ることはたまにあるとのこと。
そのことを聞いてちょっとだけ安心した。
なぜ安心したかというと、抗がん剤の影響で髪の毛が薄くなるならそれは僕にとっては許容範囲だ。
もし将来抗がん剤をやめることができれば今の薄毛の進行は止まる可能性は十分あると思う。
問題なのはもしかしたらたまたまこのタイミングで加齢による薄毛が始まってしまってたら…と思うとショックはでかいし、もうどうしようもない。
抗がん剤の影響での薄毛なら原因がはっきりしているので対処のしようはあるけど加齢による薄毛ならもう髪の毛のボリュームはもどらないと思っていたので。
もしも、今後抗がん剤の影響で薄毛が進行していって落ち武者みたいな髪型になったらトレンディーエンジェルネタでもつかみでやろうかな?
「ヨシノさんだぞ!」
なんてね。
5クール目の抗がん剤治療の点滴開始
12:00ごろ、5クール目の抗がん剤治療の点滴が始まった。
今回も特にベッドの空きが無いといった問題もなく、4人部屋の病室に入ることができた。
しかし点滴が始まった直後から気分が悪くて横になる。
最初は吐き気止めの点滴だから抗がん剤はまだ身体には入ってないけど気持ち的なものか、それとも前回までの抗がん剤の副作用がまだ尾を引いているのか。
どちらかは分からないけど気分が悪いことは確かなので病室でおとなしくしていよう。
そして夜は早めに寝てしまうことにしよう。
5クール目の抗がん剤治療での入院2日目
昨晩は睡眠導入剤を飲んで早く寝たこともあり、早朝5時に目が醒める。
夜に比べて朝のうちは気分がいい方だと思う。
人にもよるかもしれないけど、僕の場合での抗がん剤の副作用は常に同じようにつらいというわけではなく、波のようなものがあって時間帯によってつらかったり比較的そうでなかったりとさまざまある。
僕の場合は朝のうちはどちらかというと倦怠感のつらさ度は軽い方で夜になるとつらさ度が増してくるように思う。
夜。特に入院中の消灯後の病室ではやることも限られてくるし、なかなか眠れずにベッドの中で何度も寝返りをうって悶々うつうつと過ごしていてもつらいだけなので睡眠導入剤を服用して早めに寝て、24時間のうち副作用でつらい時間帯はなるべく眠るようにできるだけコントロールしようとしている。
癌だと人に打ち明けたときに見られる2種類の反応
癌。
とりわけ「ステージ4の癌」と言うのはそれを聞いた人々に強い印象を与えると思う。
多くの人たちが「ステージ4の癌=助からない」というイメージというか固定概念を持っているのではないかと思う。
ただ、人によっては癌という病気にたいしてあまり知識が無く、癌の進行度のステージが4段階あってステージ4が一番5年内生存率が低いということをまったく知らない人もいるのでそういった人はただ「きょとん」とするだけの場合も多い。
僕は自分が大腸癌だと診断されて、しかもステージ4のがん進行度だと告知されてからこれまでいろいろな人に自分が癌であると打ち明けてきた。
基本的なスタンスとしては
「何かの拍子で病気のことを聞かれたら包み隠さず話す。もし何も聞かれなければ自分からは余計なことは話さない」
という感じだった。
ただ例外的に「この人には僕が最後を迎える前に自分の口から病気のことを告げておきたい」という人たちには自分から連絡を取って病気のことをすべて打ち明けた。
このようにして僕はこれまでいろいろな人たちに自分がステージ4の大腸癌だと告げてきたけど、そのことを告げられた人たちが取る反応として大まかに分けて2つの反応に分かれることに気付いた。
素直に悲しみ、同情、愛惜の念を表あらわし、気持ちに寄り添おうとする人
そのひとつは
素直に悲しみ、同情、愛惜の念を表あらわし、気持ちに寄り添おうとする人。
こういった反応をする人は基本的に他者に対しても自己に対しても肯定的であるイメージがある。
「大変だったね」
「つらいだろうね」
「きっと大丈夫だからね」
こういった言葉をかけて必要以上に励まそうとしたり踏み込もうとしたりせずに適度に距離をとりつつ気持ちに寄り添うといった感じの人たち。
混乱する人
そしてもうひとつは
混乱する人。
この混乱する人にはさまざまなタイプがあると思う。
特別ながん治療法や薬をすすめてくる奇跡を啓蒙する人。
あっけにとられる人。
言葉に詰まる人。
などなど、
多くの人が亡霊でも見るような目で見る。
すでに屍人であるような目で見る.
もう長くはないんだろうな、という目で見る。
無理もない。
責める気もない。
ステージ4の癌といえばほぼ死刑宣告に近い印象を誰しも持っているのは当たり前だ。
どの反応が正解だということもないと思う。
ただ個人的には自分自身の価値観を押し付けてくるようなことはすべきではないと思っている。
「〇〇さんはあの薬で助かったらしいからやってみれば?」
とか、
「あの治療法がいいらしいから調べてみたらいいですよ」
など、こういった自分が見聞きした中で「奇跡的に助かった人」のことを教えてくれる人たち。
混乱するあまり「なんとかして助けにならないか」と焦る気持ちはよく分かるが、医療従事者でもなく、エビデンスも確かではない奇跡に安易に人を啓蒙すべきではないと個人的には考える。
もちろんこのような心遣いもありがたいと思う。
どんな反応であれ、それはほぼすべて「善意」がベースになっていると思うから。
目の前の人間が今にも消え去りそうな事態をなんとか防ぐことはできないかという気持ちの表れだと思うから。
僕の周りの人たちはみんなやさしい。
それはとてもとてもありがたいことで恵まれていることだと思う。