44歳の僕がステージ4の大腸がんと診断されて

2016年大腸がん発覚。手術後、腹膜への転移が確認されステージⅣだと告知される。その後半年間に及ぶベクティビックス抗がん剤治療を受ける。2018年12月がん再発。アバスチン抗がん剤治療を受ける。48歳になりました。

薬剤師さんに保険適用内になる「がんゲノム医療」について聞いてみた

この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2019年の2月下旬に書いたメモをまとめています。

担当の薬剤師さんにこの先保険適用内になる「がんゲノム医療」について聞いてみた

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2019年2月。

4クール目の抗がん剤治療で入院していた時に、病室まで様子を見に来てくれた担当のカワノ薬剤師さんに最近ニュースで聞いた、「がんゲノム医療」について聞いてみた。

薬剤師さんもそのニュースは知っていて、近い将来には保険適用内になるらしいこともすでにご存じだった。

薬剤師さんの話によるとゲノム検査は従来の遺伝子検査よりは精度があがるみたいだが、かといってそれに対応できる薬が数多くあるかというと、実際はそうでもないらしい。

もしかしたらゲノム検査を行った結果、検査対象の癌に対して効果がある薬が保険適用内ではほとんど無い、ということが分かるだけ…という検査結果になる可能性もある。

ただ、保険適用外でがんセンターなどで行われている治験に入れてもらえることもあるみたいだ。このことは以前担当医のアマキ先生に同様の質問をしたときにも聞いたような気がする。こういった点が今のところの医師間の共通認識なのだろうか。

www.44cancer.com

ただ現時点(2019年2月)でもがんゲノム医療以外で遺伝子的な検査は行われていて、RAS遺伝子検査などが行われているとのこと。

RAS遺伝子検査とはRAS遺伝子に変異があるかどうか調べるもので、外科的手術などによって摘出したがん細胞の組織の一部から10μm(0.01mm)程度の標本を作り、その標本からがん細胞の遺伝子を取り出したものを特殊な機械で調べるというもの。

大腸がんの場合、このRAS遺伝子変異があるか無いかの確率は半々で、変異の無い場合は「抗EGFR抗体薬」または「抗体医薬品」の効果が期待できる。

僕が実際に2016年に受けたベクティビックス抗がん剤は抗体医薬品と呼ばれるタイプの薬だった。

EGFR、抗体医薬品とは

EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)とは日本語で、上皮細胞増殖因子受容体と呼ばれます。EGFRは体の中の様々な細胞、例えば皮膚や肺、消化管などにあります。
EGFRという受容体は細胞が正常に働くために必要不可欠なもので、主に細胞の増殖に関わっています。EGFRにEGFなどの物質が結びつくことで細胞は指令を受け、分裂し増殖を始めます。つまりEGFRは細胞の増殖のスイッチのような役割を果たしているわけです。

このEGFRは皮膚や肺などの正常な細胞だけではなく、がん細胞にも存在します。さらにがん細胞ではEGFRの数が多く働きも活発なために、正常な細胞に比べて増殖のスピードが速くなります。
大腸がんでは患者さんの25~77%でEGFRが過剰に見られることがわかっています。


抗体医薬品とは
抗体は体内に侵入した異物(抗原)に結びつき、その働きを抑えるタンパク質で、特定の細胞や組織にのみ働くという性質を持っています。このような体が持っているシステムを抗原抗体反応と呼び、この仕組みを医薬品として利用したのが抗体医薬品です。

大腸がん治療に適用される抗体医薬品(モノクローナル抗体)はがん細胞表面のEGFRを目印にピンポイントに結合し、増殖を妨げるために患者さんにとってより効果的で副作用の少ない治療薬として開発されました。

これまでの抗体医薬品はマウスの抗体や、マウスとヒトの抗体が一定の割合で混ざったものでした。しかし、これらの抗体は私たちの体の中では異物とみなされることがあり、インフュージョンリアクション(注入反応)などのアレルギー反応を起こすことが問題視されていました。

ベクティビィックスは、ヒト型抗体の医薬品です。すなわち異物と認識される可能性が低く、注入反応などのアレルギー反応が起こりにくい抗体医薬品として期待されています。

 

※ 小冊子「ベクティビックス®による治療を受ける患者さんへ」より引用

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僕も大腸がんの手術後にRAS遺伝子検査を受けていた

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カワノ薬剤師さんが言うには

「ヨシノさんも以前RAS遺伝子検査を受けられてますよ。その検査結果でベクティビックスや今やっているアバスチンの効果が期待できると判断されたわけです」

と教えてくれた。

「あ、そういえば大腸がんの摘出手術の後にそのときの担当医だったウエノ先生が『今、取り出したがん細胞の一部を標本にして遺伝子検査をやってますからね』って言ってたような気がします」

「そうです。確率的にベクティビックスのような抗体医薬品の効果が期待できる大腸がんの患者さんの確率は50%だと言われていますが、ヨシノさんの場合効果が期待できる『野生型』だという検査結果だったんです」

「そうだったんですね。ある意味ラッキーだったのかな?」

「使える薬が多いことにこしたことはないですからね、そう言えると思いますよ」

ちなみにRAS遺伝子に変異のある「変異型」では抗体医薬品の効果は期待できないらしい。

最後に薬剤師さんは

「がんゲノム医療などについて、また新たな情報が分かったらお伝えしますね」

と明るく言い残して病室を後にしていった。

ホントに頼りになる薬剤師さんで心強い。

がんの特効薬が開発されてほしい。というのが本音のところ

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さまざまな医療技術の発達によって昔は「不治の病」だったものが完治したり、治療できるようになってきている。

以前はそんなニュースを聞くたびに

「助かる人が増えて良かったねえ」

くらいに考えていたが、その当事者となった今の僕としてはその医療技術の発達が先か自分の命が尽きるのが先かのせめぎ合いの中にいる。

本音を言えばものすごい特効薬が開発されて、この「がん」という呪縛から抜け出したいというところが正直なところ。

でも、将来起こるかどうか分からないものに期待ばかりしてもしょうがない。それは逆に将来起こるかもしれないネガティブなことに必要以上に不安になってばかりでもしょうがないということに似ている気がする。

過度な期待はせず、今の自分にできることを精いっぱいやりつつ未来の医療技術に期待していこうかな。