広島で医者をしてる従兄にセカンドオピニオンについて相談してみる
広島で医者をしてる従兄にセカンドオピニオンについて相談してみる
この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2019年の6月下旬に書いたメモをまとめています。先日の経過観察でのCT検査の結果に激しく落胆しましたが、何か他に打つ手はないかと模索し始めました。
遠く離れた広島に住む従兄のセイちゃんに電話してみることに
2019年6月。
先日の経過観察でのCT検査で、PD(がん増大)傾向にあるという結果が出て、激しく落ち込み、動揺した。
これまで抗がん剤治療以外でも何かできないかと思い、生活習慣の改善などの努力を重ねてきたが、その努力も虚しくがんの病勢を抑えることができなかった。
CT検査の結果を踏まえ、今後の治療方針を医師と話し合ったとき、だんだんと打つ手が無くなってきているような気がした。
担当医のアマキ先生から大腸がんガイドラインに載っているフローチャートのようなものを見せてもらったが、ガイドラインで推奨されている薬はあとふたつくらいらしい。加えてそのふたつは以前行ったベクティビックス抗がん剤やアバスチン抗がん剤に比べて効果の期待値は落ちるとのこと。
使える薬がどんどん減っていく。効かなくなっていく。
そんな恐怖が心に重たくのしかかっていた。
一応来週の予定としては以前やったベクティビックス抗がん剤をもう一度試してみるということになっているが、そのベクティビックス抗がん剤も効果が無いということになればいよいよ選択肢は狭められてくる。
「何かほかに手はないのか…いっそのこと他の病院でセカンドオピニオンを受けてみるか…」
そんな考えを巡らせるうち、僕は前々から少し考えていたある人に電話をかけてみることにした。
それは僕のいとこで、今広島に住んでいて医者をやっている3つ年上のいとこのセイちゃん(仮名)だ。
セイちゃんは僕の母の兄の息子にあたる従兄で、僕が子供のころは同じ市内に住んでいた。夏休みなどはセイちゃん家に弟と泊まりに行ったりして、僕たち兄弟はよく遊んでいたものだ。
だがお互い大人になり、セイちゃんが広島の大きな病院に勤務するようになってからは親戚同士の集まりで顔を合わせることも少なくなり、すっかり疎遠になってしまっていた。
僕自身セイちゃんに電話することは少しだけ抵抗があった。
これまでの僕のスタンスとしては
「自分のがんについて聞かれれば隠さず答える、聞かれなければこちらからは余計なことは話さない」
という方針だったので、自分からがんのことについて話すのはためらいがある。しかし、もうそんなことを言っている場合でもないと思い、とりあえずはセイちゃんに電話して、医者として専門家の意見を聞いてみたいと思った。
セイちゃんは広島の大きな病院で麻酔科の医師として働いているので、外科や腫瘍科が専門ではないけれど、日々現場で働く医師の肌感覚の意見や何か新しい情報が得らないかという期待があった。
セカンドオピニオンは意味がない?
夜7時半ごろにお宅に電話すると電話口には偶然セイちゃん本人が出た。
「セイちゃんこんばんは、お久しぶりです」
「あーご無沙汰してます。どうかしたの?」
「ちょっとセイちゃんに相談したいことがあって電話したんだけど…」
「うん」
「もう結論から言ってしまうとね、俺ガンになってしまって、そのことでちょっと相談したいと、医者としての専門家の意見を聞いてみたいなと思って電話したの」
そう言うと僕はこれまでの経緯をおおまかにセイちゃんに説明した。2016年に大腸がんと診断されて、これまでやってきた抗がん剤治療についても話した。
「聞いてみたいのは、もうだんだん使える薬もなくなって手詰まりになってきたので、何かほかに手はないかと思ってセカンドオピニオンを受けてみようと思うんだけど…」
「うんうん」
「それで結局のところどこの病院に行ってもガイドラインに準拠した治療を行うということであれば、セカンドオピニオンを受けても意味ないのかなあ、と思って。その辺の意見を専門家として医者であるセイちゃんに聞いてみようと思ってね」
「うーん…、今の話を聞いている限りでは今治療受けている病院では最善の方法をとっていると思うよ」
「あ、やっぱりそうなんだ…」
やっぱり他に手はないのか…話を聞きながらそう感じた。
セイちゃんは続けて
「何か医師と患者の間で揉めているような感じでもないし、よっぽど変なことをしてない限りセカンドオピニオンを受けてもあまり変わらないんじゃないかなぁと思うよ」
ある程度予想はしていたが、ただやみくもにセカンドオピニオンを受けてもしょうがないということは分かった。僕自身CT検査でPD(増大)という評価を受けてかなり動揺し、パニックになっていたのだと思う。
これまで大あわてで何か取り組んでもいい結果になったことはあまりない。独りよがりで勇み足になるよりは事前に相談できてよかった。
新薬の治験。新たな可能性にかけてみる
続けてセイちゃんは
「それでね、もしよければ担当医のドクターに相談してみて、『新薬の治験とかに参加して新しい治療の可能性を試してみたいんですけど』って相談してみるのもひとつの手だと思うよ」
「治験ってあの実験みたいなやつ?」
「まあ、そんな感じかな。国公立の病院や、大学病院でがんの研究をしているところは新しい新薬や治験にエントリーできる場合があるから、そういったところで新しい薬を試してその可能性にかけてみるのもいいかもしれないね」
「その発想はなかったなあ」
そしてセイちゃんは電話で治験や新薬に関していろいろアドバイスをしてくれた。
おおまかにまとめると
- メリットとしては新薬が厚生労働省から認可されて一般的に出てくるのは治験から3年くらいはかかるので、治験を受けることで認可前の最新の治療を受けられる可能性がある。
- 治験はデータ収集を目的とし、患者さんにサンプルになってもらっているので、たいていの場合、治療費は医療側が負担することになる
- デメリットとしては人体に投薬されるまでにさまざまな生体実験は行われているが、完全に安全性が確認されたわけでもないので、思いもよらない副作用とかが出てくる場合もある
- 医師が使用しているガイドラインは5年ごとに改定されるので、もし今使っているガイドラインが来年改定されるとしたら今使っているガイドラインは古い場合もあるので、そういった意味でも治験や新薬にエントリーするということが新しい治療方法を率先して受けることができるというメリットもある
- 担当医のドクターとの信頼関係は大事にすること。もし治験が受けられることになっても紹介状を書いてもらわないといけなかったり、がん組織のサンプルを送ってもらわないといけないのでいろいろ協力してもう必要がある
- 多くの場合、医師や病院側のスタッフは患者が思っている以上に患者に対して協力的である
- 自分の思いや考えを『手紙』に書いて渡すのも有効。医師はその手紙をスキャンしてカルテに添付するから記録にも残るし、医師の方でも忘れにくくなる。
- ドクターに直接話がしづらい場合、大きな病院ではソーシャルワーカーなど患者さんの悩みを聞いてくれる人もいて(○○相談室など)、そういった人を介してドクターに伝えてもらうのも一つの方法。だが仮に他の病院に移ることになったとしても結局のところ医師を通して紹介してもらうことになり、紹介状を書いてもらわないといけないので直接言ったほうが早い場合が多い
セイちゃんはこれらのことを親身になってアドバイスしてくれた。
加えて
「とにかくまずは担当のドクターに相談してみることがベストだね。相談するときに『先生の医局の方でご存知では無いでしょうか?紹介してほしい』ということを率直に言ってみることがいいと思うよ。『医局』というキーワードを出すと良いよ。」
とお医者さんならではのアドバイスもしてくれた。
「もし治験や新薬を探すのに困ったら手伝うからその時は言ってね」
と言ってくれて、あとはたわいもない世間話を少しして電話を切った。
ドクターの目線から見たアプローチは患者側からは思いもよらないものだった
これまで「治験」という言葉を聞いたことはあったが、僕のイメージ的には「お金に困った大学生がアルバイトで未承認の薬を飲む」くらいの感覚だった。
セイちゃんからのアドバイスで治験に対するイメージは僕の中で大きく変わった。
確かに今の医療技術は進歩していってはいるが、厚生労働省から新薬が認可されて保険適用内になって一般病棟で使われるようになるにはかなり時間がかかるだろう。
僕にはその法整備が整うまで悠長に待っている時間はないので、これからの方針としては新薬の治験の可能性にかけてみたいと思った。
とにかく打つ手がなく、どん詰まりのように感じていたけど、今回セイちゃんに相談して少しは気が楽になった。
今の思いを手紙に書くことに決めた
とりあえずは担当医のアマキ先生宛に治験を受けてみたいという僕の考えを手紙に書いて渡そうと思う。
一応一週間後にはまた抗がん剤治療で入院する予定なので、そのときに話してもいいのだけれど、そこから先生に動いてもらうより先手を打って行動を起こしたほうが早く物事が進むと思うし、先送りにしていいことなんて何もない。
それに医師は多忙だ。手紙で文章にして考えをまとめたほうが話を口頭で聞くより手っ取り早いし、記録に残ったほうが忙しさでうっかり忙殺される可能性も低くなると思う。
とにかく僕はまだあきらめない。死んでたまるか、可能性があればそれにかけてみる。
どんな小さなことであっても生きるための行動をしていこうと思う。
立ち止まってふさぎ込んでいるばかりでは事態は好転しないのだから。