4クール目の抗がん剤治療での入院2日目から退院まで【がん闘病記54】
この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2016年の8月中旬ごろに書いたメモをまとめています。
4クール目の抗がん剤治療入院2日目
2016年8月。
昨晩は睡眠導入剤のゾピクロンをもらって早く(10時頃)眠ったせいか早朝4時過ぎに目が醒める。
目が覚めて真っ先にすることは自分の体調に意識を向けて抗がん剤の副作用はどうなのか確認すること。
倦怠感は昨日よりもマシになってきた気がする。
冷たいものを持つと手がしびれる
しかしさすがに早朝4時起きは早い。二度寝しようと思ったけどどうにも眠れないので病室を出て同フロアに設置されてる自販機で冷たい缶コーヒーを買う。
ガコンと落ちてきた缶コーヒーを左手でつかんだ瞬間、ピリっとした痺れを指先に感じる。
加えて、その冷たいコーヒーを飲んだ時に口内の奥からのどにかけて少し痺れを感じた。
その後も口の中がしびれてるような感覚が続く。
なんと表現したらいいだろうか、歯医者で虫歯などを治療する際に麻酔をして治療が終わった後もしばらくしびれが残っているような感覚。
長いこと軽いしびれが続いている。
軽いといっても舌から味覚を奪うのには十分なしびれで、朝食の時間になり食事をしてもあまり美味しいと思えない。
つまんない。
食事が楽しくないというのは人生の楽しみの大半を奪われた気がする。
逆に人生の楽しみの大半が食事に占められているというのもつまらない人生のような気もするけど…
他にもっとやることはないのかと…
副作用の波
入院して抗がん剤の投薬が始まってから不思議と下痢は治まってきたけど午後になって吐き気がひどくなり、それに伴って倦怠感も酷くなる。
つらさ度は8くらいまでひどくなった。
でもよくよく考えれば倦怠感はつらいけど痛いわけじゃない、寒くて凍えるわけじゃない、暑くてうだるわけじゃない、渇きに身悶えするわけじゃない。
じっと寝てればつらさも多少は和らぐ。
なんてことはない。
そう考えるのはやせ我慢かな。
抗がん剤の副作用からくる倦怠感って結局のところ「掛け算」なんだと思う。
ベースにある倦怠感はたいしたことないけどそれに「吐き気」、「口内のしびれ」などが掛け合わさって倦怠感が増していく気がする。
4クール目の抗がん剤治療入院最終日
朝起きた感じでは吐き気は少し治まっていた。
食欲はないけどパンにジャムをつけたものならある程度は食べられた。
食べ物についてだけど、僕は抗がん剤治療が始まってからというもの、つねに「食べられるモノ探し」をしている。
食欲は無いのだけど食い意地は無くならないようで、ある程度吐き気があっても食欲が無くても何か食べれるものはないか?といつも探している。
大抵は直感に頼るものが多いが失敗も多い。
スーパーでトウモロコシを見つけては「茹でたものなら食べれそう」と思い、茹でて食べてはみたもののあまり食べられなかったりと、他の食材でも同様のことは多い。
そんなトライアンドエラーを繰り返しながら抗がん剤治療中でも食べられるモノが増えていった。
全部を試したわけじゃないけど、果物関連はほとんどの場合で無理なく食べられるみたいだ。
好みの問題はあるけれど抗がん剤治療する以前に比べたら果物が好きになった。
ただ、缶詰とか調理したものはたまにダメな場合もあるけど、未調理の果物そのものなら大丈夫だと思う。
お菓子でも以前はあんなにも好きだったチョコレートがあまり食べられなくなった。
でも、ホワイトチョレートなら食べられるとか、以前は好きじゃなかったキャラメルが食べたくなったりとさまざまある。
こんな感じなので体重は減少傾向にはあるものの、それほど急激には減ってはいない。
癌が発覚する前の体重は75㎏くらいで今は70㎏台を割り込んでいるかな?
でもIBM値から見てもまだ太り気味のほうだから少しは余裕がある。
体重は最終的に60kgの前半あたりをうろうろしておいてくれれば御の字だと思う。
フル・ドーズな僕
朝食後しばらくして担当医のウエノ先生が様子を見に病室まで来てくれた。
ウエノ先生は僕が入院している間はほぼ毎日何かしら時間をみつけて様子を見に来てくれている。
これまで下痢の症状がひどいことを伝えておいたので脱水症状にならないように心配してくれてるようだった。
なるべく水分補給に気をつけるように言われた後、先生はこう続けた。
「それとヨシノさんの場合はですねえ……………」
・
・
・
「ですねえ…」からの沈黙が長い。
先生の表情を見ると何か言葉を選んで話そうとしているのだけは解るけど、何かネガティブなことを言われるんじゃないかと緊張が走る。
例えば
「もう治る見込みがないんですよ」
とか
「もう手の施しようがないんですよ」
とか…
そんなこと言われたらもうショックで立ち直れない。
そしてしばらくの沈黙の後、先生が続けてこう言った。
「………フル・ドーズなんですよ。」
へ?ふるどーず?もしかしてロックスターとかが薬物のやりすぎで死亡した時の死因でオーバー・ドーズなんてこと聞いたことあるけどそれと似た感じなのかな?
僕のちょっと理解があるような表情を見てとったのか先生は続ける。
「うん、お年寄りとか体力のない人は薬の量を8割まで減らしたりして調整するんだけど、ヨシノさんの場合は若いし元気なんで、どうせやるならってことで薬の量は規定量の100%出してるんですよ。もう、目いっぱいね(笑)それがフル・ドーズってことなんです」
ウエノ先生は僕の身体にも癌細胞にも容赦はないらしい。
「だからちょっとキツいかもしれないけど頑張ってください」
そういい残すと先生は病室を後にした。
仕事が早い薬剤師さん
その後、しばらくして今度は担当の薬剤師さんが様子を見に病室に来てくれた。
色々と薬のことで相談したあと、抗がん剤の投薬を重ねるごとに酷くなる副作用の「吐き気」について相談したところ
「ウエノ先生に相談してみますね」
と慌ただしく病室を出て行った。
彼にはいつも助けられている。
薬に対する疑問を明るい口調で明快に答えてもらうことが患者にとってどれほど助けになるだろうか。
計り知れない。
今度キチンとお礼が言いたいな、なんて考えながら病室のベッドの上でゴロゴロしてると15分もしないうちに薬剤師さんが半分息を切らせながら慌ただしい様子でまた病室に入ってきた。
どうやら吐き気止めの飲み薬をウエノ先生を捕まえて相談して手配してくれたらしい。
なんという仕事の速さ。
素早い対応とその行動に対する瞬発力の高さ。
仕事ができる男はこういった所作が違ってくるもの。僕も見習いたい。
僕がお礼をゆっくり言う暇もなく、来た時と同様に薬剤師さんはまた慌ただしく病室を後にした。
本当にありがとう。薬剤師さん。
癌に罹(かか)るというシナリオ
しかし、考えてみるとこの「癌に罹る」というのは僕の人生の中で一大イベントだ。
これまでの人生を振り返ってみても自分自身にこれほどの衝撃を与えたものは他には無い。
これに次ぐのが今年の初めに起きた父の事故による急逝だが、それはまた別の話。
僕の人生を一幕の劇に例えるなら今はクライマックスの手前くらいなのだろうか?
この劇のシナリオを自分で書けるとしたら僕はどうしたいだろう?
ステージ4の大腸癌と診断されて失意のどん底に落とされもがき苦しむ主人公。
そのあと様々な苦難を乗り越え成長し、捲き起こる奇跡。奇跡。奇跡!
これでもかこれでもかと奇跡が起こる!
終わらない奇跡の連打連打連打!そして物語はハッピーエンドに。
なーんてシナリオに自分で書き換えられたらいいのになあ。
4クール目の抗がん剤の投薬終了
16:30ごろ、4回目の抗がん剤の投薬が終了した。
これで予定している12回のうち1/3が終わったことになる。
あと2回終わって6回まで終了すれば、予定している半分に到達し、折り返し地点まできたことになる。
中間が見えれば終わりも見えてくるだろう。
なにせ半分から先は残っている回数よりも消化した回数の方が多くなるばかりなので。
だから頑張ってこのつらさも受け入れよう。これもそれもあれも僕が選択したことなのだから。
まだギブアップなんてしないから。