44歳の僕がステージ4の大腸がんと診断されて

2016年大腸がん発覚。手術後、腹膜への転移が確認されステージⅣだと告知される。その後半年間に及ぶベクティビックス抗がん剤治療を受ける。2018年12月がん再発。アバスチン抗がん剤治療を受ける。48歳になりました。

セカンドオピニオンで新薬の治験とがんゲノム医療について聞いてみた

治験の可能性は?九州がんセンターでセカンドオピニオンを受ける

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この記事ではヨシノ (id:yo_kmr)が2019年の7月上旬に書いたメモをまとめています。新薬の治験のエントリーを目的としたセカンドオピニオンを九州がんセンターで受けることにしました。

福岡市にある九州がんセンターへ

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2019年7月。

先月のCT検査で体内のがんが増大傾向にあるという結果になり、がんが再発してから行っていた二つ目の抗がん剤治療であるアバスチン抗がん剤+(FOLFIRI療法)も効果がないという評価になってしまった。

このことでひどく落ち込んだが、病診連携室のマエザワさんと新たな治療方法を相談することで少しだけ希望が見えてきた。

今回向かう九州がんセンターでの治験はそのマエザワさんが提案してくれたもので、九州がんセンターでのセカンドオピニオンを受けるために必要な資料送付や問い合わせなどの段取りも病診連携室ですべてやっていただいた。

セカンドオピニオン外来ではなく初診として診察を受けることもできるが、それだと拠点となる病院を移動することになり面倒なことになるので、こういった場合、通常はセカンドオピニオン外来での受診が一般的らしい。

九州がんセンターまでは車で2時間弱の距離。

あらかじめネットで下調べしておいたので、特に迷うことなく着くことができた。

九州がんセンターは大きくてきれいな施設だ。

受付であらかじめ郵送で送られてきた「予約票」を出して受付をすませ、問診表にこれまでの病歴などを書いていく。

そしてしばらく待ってから今回担当してくださるエザキ先生(仮名)の診察室に呼ばれた。

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セカンドオピニオン外来を受診する

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エザキ先生にはアマキ先生からの紹介状や僕の病状のデータは届いていると思うが、最初は僕のこれまでの経緯を簡単に説明した。その後にエザキ先生は自分の考えを述べられた。概要をまとめると

  • エザキ先生もアマキ先生と同様に標準治療で推奨されているベクティビックス抗がん剤+(FOLFOX4療法)に賛成
  • 大腸がん手術後2年間再発がみられなかったということはベクティビックスは十分効果があった考える
  • ベクティビックス抗がん剤の副作用として皮疹(皮膚トラブル)がひどいようだったが、皮疹がよく出る人ほど薬が効きやすいとも言われている
  • ベクティビックスやアバスチンと同じような抗体医薬品でアービタックスというものがあり、そちらのほうが比較的副作用として皮疹(皮膚トラブル)が出にくいのでそちらも検討してみてはどうか

との意見だった。

そして僕の要望としては今回セカンドオピニオン外来を受診した動機としては、担当医や今治療を受けている病院に不信感があるわけでもなく、標準治療とは別の可能性として新薬の治験に参加してその可能性にかけてみたいことと、2019年6月から保険適用になったとニュースで聞いた「がんゲノム検査」を受けてみたいという2点であることを伝えた。

「じゃあがんゲノム検査についても少しお話ししましょうか」

と言ってエザキ先生は話を続けた。

保険適用になったがんゲノム検査の実態と厳しい現実

「僕も詳しくは知らないんですが、先日ニュースで2019年6月から『がんゲノム検査』としてNCCオンコパネルとファウンデーションワンというものが保険適用になると聞いたんですが…」

という僕の問いにエザキ先生は

「確かにニュースではそう報じられましたが、まだ実際のところ全国の各病院と国立がん研究センターや検査会社でのデータのやりとり等の連携が十分されてない状況です。今いっしょうけんめい準備してるんですが、今のところ国内で保険適用で運用されている病院はどこにも無いというのが現状です

「え、そうなんですか」

「ええ、実際に保険適用で運営されるにはあと2~3ヵ月先になりますね。(2019年7月現在)ですので今の段階でその検査をやろうとすると全額自費になりますのでかなりの費用がかかってしまいます」

「そうだったんですね…」

そしてさらに先生は説明を続けた。

「がんゲノム医療では遺伝子異常を調べて異常が見つかれば、それに対応した薬を使用する。というものなんですが、仮に遺伝子異常が見つかってもそれに効果が期待できる薬があるとは限らないんです」

「ただ単に遺伝子異常が見つかるだけで終わる場合もある。ということですか?」

「はい。そしてがんゲノム検査で遺伝子異常が見つかる人は検査を受けたかた全体の10%ほどだと言われています。そしてその10%の中の一部の人が治験の対象になる。もしくは未承認の薬を自費で使用する。という場合もあります」

うーん、がんゲノム検査で遺伝子異常が見つかるのは検査したひと全体の10%くらいで、そしてさらにそのなかの一部の人が治験の対象になるのか…治験へのエントリーはかなりきびしいものになりそうだ。

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先生は加えて、

「そして仮に治験の対象になって新しい治療ができるとしたら効果は期待できますが、まだどれくらいの効果があるか不明ですし、どのような副作用が出てくるかはまだ未知数なところもありますので、完全に安全性が確立されたというわけでもないんです」

それでも可能性が少しでもあるなら試してみたい。そう思った僕は先生に質問した。

「こういったがんゲノム検査などをしないで『ただ治験に参加する』という方法はないんですか?」

「今、大腸がんの患者さん対象で、どのようなかたでも参加できるという治験はうちではちょっとやっていないですね…」

とのことだった。

血液を採血して遺伝子異常を調べる研究、リキッドバイオプシー

「ただですね、うちはがんセンターなんですが、全国のがんセンター系列の病院で消化器がんの研究をやってるグループが血液の中の遺伝子異常を調べるリキッドバイオプシー(GOZILA試験)という研究をやってまして、それはうちでもやっています」

「リキッドバイオプシーですか?」

「はい、この研究では血液の中のがんからこぼれ落ちる遺伝子を調べて、それに遺伝子異常があれば治験の対象になる場合もありますし、将来その遺伝子異常に対応した薬が開発されるかもしれません。なのでもし希望されるのであれば採血を今の段階でやっておいて、リキッドバイオプシーの研究に参加されるということも可能です」

「そのリキッドバイオプシーは保険適用なんですか?」

「いえ、保険適用ではありませんが『研究』ですので、それに関する費用は研究費として国が負担してくれますから特に費用が発生することはありません」

このリキッドバイオプシーの検査でも遺伝子異常が見つかる可能性は低いそうだが、なんにせよ治療の選択肢や可能性が少しでも広がるならチャレンジしない手はないし、特別高額な費用が掛かるということもなければなおさらだ。

「ではそのリキッドバイオプシーの検査を受けようと思ったら具体的にどのように行動したらいいですか?」

「今日はセカンドオピニオン外来なので出来ないですが、後日改めて普通の受診として来ていただいて採血をしていただきます。その後2週間くらいで結果はでると思いますので、それまで待っていただくことになります」

「分かりました。僕としては数パーセントでも治療の可能性や選択肢が広がるならチャレンジしていきたいと思いますので、ぜひリキッドバイオプシーの検査を受けてみたいです」

「そうですね、可能性としては低いですが、もし治験の対象になったときはある程度体力がないとその研究に参加できないことがあります。見た感じ今のところまだ元気でいらっしゃるようなのでいいと思いますよ」

というわけで来週はエザキ先生が学会に出席される都合で時間が取れないが、再来週に採血と診察を受けにまたこの九州がんセンターにくることになった。

「それともう一つ気がかりなことがあって、僕が最後のアバスチン抗がん剤の投薬が終わったのが6月の半ばくらいなんですが、それ以降抗がん剤治療はしてないんです。なので待っているあいだは他の抗がん剤治療をすべきなんでしょうか?」

「もし治験に参加する場合は抗がん剤治療から2週間から1ヵ月くらい期間をあけてもらう必要があります。加えて送られてきたデータを見る限りでは急にがんが猛スピードで増大しそうだということもなさそうなので、様子をみてもいいと思いますよ」

「分かりました。ありがとうございます」

「では担当医の先生宛に今からお手紙を書きますので、それをお渡ししてこちらで検査を受けることをお伝えください。15分ほどで出来ますからちょっとお待ちくださいね」

こうして九州がんセンターでのセカンドオピニオンは終わった。

手紙を受け取ったあとは会計を済ませて帰るだけなので会計窓口へ。

自費診療で計21.600円なり。

「うっ…高い…」と、一瞬思ったけど、逆に考えれば普段は保険でカバーされているので費用は高額にならずにすんでいる。もし社会保険がなければ診察だけで毎回これくらいの費用がかかるということか…

あらためて「皆保険制度ばんざい、日本の医療制度ばんざい」と思うと同時に「怪我も病気もせず保険をまったく使わないですごされている国民のみなさんありがとうございます使わせてもらってます」と思うのだった。

今回のセカンドオピニオンで治療の方向性が見えてきた

今回初めてセカンドオピニオン外来を受診してみた。時間にして45分くらいは医師と面談していたと思う。

印象としては九州がんセンターのエザキ先生も基本的には標準治療の方に賛成というスタンスだと感じた。ただ、僕としては標準治療だけだといずれ抗がん剤も効かなくなって手詰まりになるという恐れがある。だから今のうちにいろんな可能性を模索したいと思い、新薬の治験もそのひとつだった。

そしてリキッドバイオプシーという検査を受けることで治療の方向性がハッキリしてきたように思う。

僕の中での優先順位としてはこの九州がんセンターでの治験を第一に考えているので、大きく分けて4つの選択肢ができたと思う。

  • リキッドバイオプシーの検査で現段階で治験を受けられるかどうかがはっきりする
  • 治験を受けられなければ他の治療法を探す
  • 最初の予定通りベクティビックス抗がん剤の投薬を受ける
  • 治療自体をやめる

少なくともリキッドバイオプシーの検査結果が出れば九州がんセンターでの治験が受けられるかどうかははっきりする。もし治験がダメなら他の治療法を探すということにシフトしていけばいい。とにかくいろんなところにあたってみて、可能性を模索していきたいと思っている。

ヘタな鉄砲なんだから数を撃たないことにはかすりもしない。